2017年12月27日水曜日

2017年12月 薬価基準追補収載 ~各論:会社編~

 今回は、1 2月8日に薬価基準収載がされたジェネリック医薬品の動向を、各会社に注目して分析していきたいと思います。


事業形態ごとの特徴


 各会社をその事業形態から次の様に分類し、
  1. 専業大手3社(東和薬品・沢井製薬・日医工)
  2. 外資系大手3社(テバ・サンド・マイラン)
  3. 卸系3社(共創未来・日本ジェネリック・三和化学)
  4. 新薬系(エルメッドエーザイ・日本ケミファ・第一三共エスファ・日本化薬・Meiji Seikaファルマ)
  5. その他(ニプロ等)
それぞれが薬価集した製品を次の様に分類し、
  1. 初収載
  2. AG後追い
  3. その他
整理してみました(※図中、赤文字の製品は単独開発の製品を、青文字の製品は共同開発グループを形成している製品を指します)。



分類結果

1.専業大手3社


2.外資系大手



























3.卸系3社

4.新薬系

5.その他








































1.専業大手3社の特徴


  • 成分・品目数が多い
  • “初収載”として、イルベサルタンとファムシクロビル、“AG後追い”として、オルメサルタンとロスバスタチン、主要な製品を取り揃えている
  • 他社と共同開発グループを形成せず、独自開発製品が多い
  • 沢井製薬はシタフロキサシン、東和薬品はロピニロール、単独参入品目がある


2.外資系大手3社の特徴


  • 成分・品目数が少ない
  • イルベサルタンがなく、ファムシクロビルもマイラン1社のみ、オルメサルタンもマイラン1社のみと、主要な品目を取り揃えているとは言えない
  • オルメサルタンOD錠とロスバスタチンOD錠を独自開発していない


3.新薬系の特徴


  • 成分・品目数が少ない
  • 各社により方針が明確に分かれている。エルメッドエーザイと日本ケミファは大型品(イルベサルタン/オルメサルタン/ロスバスタチン)が主力、第一三共はAGが主力、日本化薬は抗がん剤に特化、Meiji Seikaは今回、規格追加のみ。


4.卸系3社の特徴


  • 共創未来ファーマと日本ジェネリックは、成分・品目数が多い
  • 他社と共同開発グループを形成している場合が多い


5.その他の特徴


  • ニプロは、成分・品目数が多い
  • ニプロは、独自開発の製品が多く、ニプロESファーマの誕生により、ベポタスチンAGを収載
  • ニプロ以外は、“初収載”と“AG後追い”をそれぞれ取り揃えているが、共同開発グループを形成している場合が多め


最後に


 事業形態ごとに整理してみると、それぞれ特徴が見えてきたように思います。
 その製品ラインナップから、専業大手3社(東和薬品・沢井製薬・日医工)の開発能力の高さがうかがえます。開発能力は、競合他社と差別化し、シェアを取るためには必要な能力と考えられます。
 ニプロは、主要な製品を揃えていることに加え、アダパレンのような外用剤からシプロフロキサシンのような注射剤まで幅広い剤形を開発しています。また、小林化工や大原薬品工業も主要な製品を揃えています。専業大手3社以外にも、これらの会社の開発能力の高さがうかがえます。
 一方、外資系大手3社(テバ・サンド・マイラン)は、主要な製品を揃えているとは言えず、日本市場に適応しきれていないように感じます。日本における外資系ジェネリックメーカーの存在意義はどこにあるのかでしょうか。
 第一三共エスファは、AGをラインナップし、日本化薬は抗がん剤に特化しています。Meiji Seikaファルマは、今回、規格追加品以外に薬価収載した製品はなく、ジェネリック事業を見直していることがうかがえます。新薬系メーカーは、AGの登場によって各社で方針が明確に分かれていると考えられます。
 ジェネリックの普及率が一定程度まで高くなった中、薬価制度が抜本的な改革、AGの登場等、日本のジェネリック市場は大きな転換期に来ている思います。ジェネリック会社は生き残りをかけ、知恵をしぼり、色々な挑戦をしてくるはずです。これから各社の動向に注目していきたいと思います。


2017年12月18日月曜日

2017年12月 薬価基準追補収載 ~各論:成分編②~

 今回は、12月8日に薬価基準収載がされたジェネリック医薬品の動向を、オーソライズド・ジェネリック(AG)後追い収載成分に注目して分析していきたいと思います。


AG後追いのジェネリック


ロスバスタチン

 今回、23社・79品目のロスバスタチンのジェネリックが薬価収載されました。今年の8月に26社・87品目が承認されていましたが、Meiji SeikaファルマがOD錠の薬価収載を見送りMeiji Seikaファルマ、武田テバファーマと富士フイルムファーマが普通錠の薬価収載を見送った結果、競合関係は以下のような状況です。











































 ロスバスタチンでは、以下の点が特徴的です。 
  • ロスバスタチン効能追加で分析しましたが、沢井製薬とファイザー(マイラン)だけが、いち早く「家族性高コレステロール血症」の効能を追加し、先発品(クレストール)と同じ効能・効果となったこと。ただ、ファイザー(マイラン)が普通錠のみであるのに対し、沢井製薬が普通錠とOD錠の両方を揃えたところは、さすが沢井製薬といったところでしょうか。
  • 普通錠を薬価収載した22社中、普通錠とOD錠両方を取り揃えた会社は15社と多いものの、OD錠は共同開発関係にある会社が多いこと
  • OD錠に外資系大手3社(テバ・サンド・マイラン)が単独で参入していないこと。
  • 東和薬品と高田製薬が、先発にない規格の10mgを発売したこと。


オルメサルタン

 今回、17社・79品目のオルメサルタンのジェネリックが薬価収載されました。今年の8月に21社・103品目が承認されていましたが、東和薬品、サンド、ダイト(科研)、エルメッドエーザイ、武田テバファーマ、共創未来ファーマが普通錠の薬価収載を見送った結果、競合関係は以下のような状況です。

































 オルメサルタンでは、以下の点が特徴的です。
  • 先発品(オルメテック)が普通錠の販売中止を発表し、OD錠への切り替えを進めていることが影響しているのか、普通錠の薬価収載を見送った会社が多っかたこと。
  • 普通錠とOD錠を揃えた会社が少なかったこと(小林化工とニプロ)。日医工、共和薬品も普通錠とOD錠がありますが、日医工のOD錠には5mgの規格がなく、共和薬品は、5mgと40mgの規格が普通錠、10mgと20mgの規格がOD錠という変則的な状態です。
  • 外資系大手3社(テバ・サンド・マイラン)が単独で参入していないこと(OD錠にファイザー(マイラン)がいますが、単独ではなくニプロとの共同開発)。


 オルメサルタンと言えば、ヨーグルトのような特有のにおいがすることで知られています。これは、メドキソミルエステルが徐々に切断され活性本体に変化することにより発生するジアセチルが原因物質であることが知られています。
 そのため、先発品のオルメテックOD錠は、β-シクロデキストリンを添加剤として使用することでジアセチルの発生を抑えるという発明をし、特許を取得しています(特許5688799,2030/2/16満了)。
 これに対し、ジェネリック各社のOD錠を見ると、当然、シクロデキストリンのような添加剤は使用されていません。沢井製薬のHPによれば有効成分由来のにおいと吸着する機能性PTPシートを使用しているそうですが、他のジェネリックがどのようににおいの対策を講じているかも気になるところです。



 次回は、12月8日に薬価基準収載がされたジェネリック医薬品の動向を、各会社に注目して分析していきたいと思います。








2017年12月 薬価基準追補収載 ~各論:成分編①~

 今回は、12月8日に薬価基準収載がされたジェネリック医薬品の動向を、ジェネリックが初めて収載された成分に注目して分析していきたいと思います。


初収載のジェネリック


イルベサルタン

 今回、10社・33品目のイルベサルタンのジェネリックが薬価収載されました。今年の8月に11社・36品目が承認されていましたが、第一三共エスファが12月の薬価収載を見送り競合関係は以下のような状況です。



















 第一三共エスファは、ロサルタン、バルサルタン、カンデサルタンのジェネリックに加え、テルミサルタンとオルメサルタンのオーソライズド・ジェネリックを販売しています。イルベサルタンが加われば、ARBをほぼ取り揃えることになりましたが、そこまではしなかったようです。
 
 イルベサルタンでは、以下の点が特徴的です。
  • 東和薬品だけがOD錠を収載したこと
  • 過去のARBと比較し、収載されたジェネリックの数が少ないこと
  • 外資系大手3社(テバ・サンド・マイラン)がどこも収載していないこと



ファムシクロビル

 今回、10社・12品目のファムシクロビルのジェネリックが薬価収載されました。今年の8月に承認を取得した会社で薬価収載を見送った会社はなく競合関係は以下のような状況です。














 ファムシクロビルでは、以下の点が特徴的です。
  • 単独での開発が10社中3社しかないこと
  • 第一三共エスファ/小林化工が先発品にない規格の500mg錠を発売したこと
  • 「単純疱疹」の効能・効果 / 用法・用量の追加が承認され、12月の薬価収載までに先発品と効能・効果 / 用法・用量との差異が解消されたこと



アダパレン

 今回、7社・8品目のアダパレンのジェネリックが薬価収載されました。今年の8月に8社・9品目が承認されていましたが、ポーラファルマが12月の薬価収載を見送り競合関係は以下のような状況です。















 アダパレンでは、以下の点が特徴的です。
  • ニプロ以外は全て同じ共同開発グループであること
  • ニプロがゲルに加えて、先発にないクリーム剤を発売したこと



ロピニロール塩酸塩(徐放錠)

 今回、東和薬品のロピニロール徐放錠2mg/4mg「トーワ」と共創未来ファーマのロピニロール徐放錠2mg/4mg「共創未来」の2社・4品目が薬価収載されました。
 
 ロピニロールの基本特許は以下の通りです。

効能・効果再審査期間特許1879525
-用途特許
レキップ錠パーキンソン病2014/10/192013/05/20
レキップCR錠パーキンソン病2016/06/282013/05/20
 
 用途特許は既に満了しているため、再審査期間(2016/6/28)の終了後の2016年8月申請、2017年8月承認・12月収載のサイクルとなったと考えられます。
 公開されている情報に基づき、競合関係を分析したところ、東和薬品のロピニロール徐放錠2mg/4mg「トーワ」と共創未来ファーマのロピニロール徐放錠2mg/4mg「共創未来」は共同開発と考えられます。
 
 ロピニロール(徐放錠)では、以下の点が特徴的です。
  • 実質的に、一つのジェネリックだけが参入したこと



シタフロキサシン水和物

 今回、沢井製薬のシタフロキサシン錠50mg「サワイ」が薬価収載されました。

 シタフロキサシンの基本特許は以下の通りです。

効能・効果再審査期間特許2714597
-物質特許
特許2903292
-用途特許
<適応菌種>
本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、インフルエンザ菌、緑膿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、ペプトストレプトコッカス属、プレボテラ属、ポルフィロモナス属、フソバクテリウム属、トラコーマクラミジア(クラミジア・トラコマティス)、肺炎クラミジア(クラミジア・ニューモニエ)、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)

<適応症>
○咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染
○膀胱炎、腎盂腎炎、尿道炎
○子宮頸管炎
○中耳炎、副鼻腔炎
○歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎
2016/01/24
2014/04/26
2014/04/26

 物質特許と用途特許は既に満了しているため、再審査期間(2016/1/24)の終了後の2016年2月申請、2017年2月承認のサイクルで第一三共エスファがAG(シタフロキサシン錠50mg「DSEP」/シタフロキサシン細粒10%「DSEP」)の承認を取得していました。
 沢井製薬はAGから半サイクル遅れの2016年8月申請、2017年8月承認・12月薬価収載のサイクルとなりました。

 シタフロキサシンでは、以下の点が特徴的です。
  • 第一三共エスファが2017年6月に続き、12月にもAGの薬価収載しなかったこと
  • 沢井製薬のみが参入したことが



テモゾロミド

 今回、日本化薬のテモゾロミド錠20mg / 100mg「NK」が薬価収載されました。
 日本化薬のみが参入したことが特徴的です。



トラセミド

 今回、寿製薬のトラセミド錠4mg / 8mg「KO」が薬価収載されました。
 寿製薬のみが参入したことが特徴的です。



ベポタスチン

 今回、ニプロESファーマのベポタスチンベシル酸塩錠5mg / 10mg「タナベ」とベポタスチンベシル酸塩OD錠5mg / 10mg「タナベ」が薬価収載されました。
 ベポタスチンベポタスチン~続報~ベポタスチン~続報2~で分析しましたが、“円満解決”の結果、田辺製薬販売がニプロへ売却されたことで誕生したニプロESファーマから、通常のジェネリックに先行してAGが発売されることになったと思われます。



 次回は、12月8日に薬価基準収載がされたジェネリック医薬品の動向を、オーソライズド・ジェネリック(AG)後追い収載成分に注目して分析していきたいと思います。

2017年12月 薬価基準追補収載 ~概要~

 12月7日に後発医薬品等の薬価基準追補収載が官報告示され、12月8日に薬価基準収載がされました(官報はhttp://kanpou.npb.go.jp/から確認できます)。
 そこで、12月8日に薬価基準収載がされたジェネリック医薬品の動向を、概要/各論:成分編/各論:会社編に分けて分析していきたいと思います。



収載会社数が多かった成分Top 5


 薬価収載した会社数が多かった成分Top 5は、ロスバスタチンカルシウム、オルメサルタンメドキソミル、イルベサルタン、ファムシクロビル、アダパレンでした。


成分名収載会社数収載品目数
1ロスバスタチンカルシウム2379
2オルメサルタン メドキソミル1779
3イルベサルタン1033
4ファムシクロビル1012
5アダパレン78
 
 薬価収載を見送った会社も複数ありましたが、2017年9月に第一三共エスファからオーソライズド・ジェネリック(AG)が発売されたロスバスタチンとオルメサルタンのジェネリックに参入した会社が多かったです。また、イルベサルタンは、過去のARBの中で参入会社数がもっとも少ないという結果でした。

初収載成分


 この12月の薬価収載で初めてジェネリックが収載された成分は、次の8成分でした。


成分名収載会社数収載品目数
1イルベサルタン1033
2ファムシクロビル1012
3アダパレン78
4ロピニロール塩酸塩(CR)24
5シタフロキサシン水和物11
6テモゾロミド12
7トラセミド12
8ベポタスチンベシル酸塩14
 
 イルベサルタンでは、通常のジェネリックと同時にAGが薬価収載され、ベポタスチンでは、通常のジェネリックに先行してAGが薬価収載されました。一方、シタフロキサシンでは、第一三共エスファがAG(シタフロキサシン錠50mg「DSEP」/シタフロキサシン細粒10%「DSEP」)の承認を取得していましたが、AGの薬価収載はされませんでした。




会社別薬価収載成分数・品目数


 今回、2成分以上を薬価収載した会社は、次の22社でした。

会社名成分数品目数分類
1東和薬品株式会社822専業大手
2沢井製薬株式会社716専業大手
3ニプロ株式会社 + ニプロESファーマ株式会社620専業その他
4共創未来ファーマ株式会社511卸系
5日医工株式会社516専業大手
6日本ジェネリック株式会社512卸系
7小林化工株式会社417専業その他
8エルメッドエーザイ株式会社311新薬系
9株式会社陽進堂39専業その他
10大原薬品工業株式会社311専業その他
11辰巳化学株式会社39専業その他
12日新製薬株式会社37専業その他
13日本ケミファ株式会社311新薬系
14日本薬品工業株式会社38新薬系
15ファイザー株式会社 + マイラン製薬株式会社37外資系
16キョーリンリメディオ株式会社26専業その他
17ダイト株式会社25専業その他
19共和薬品工業株式会社28外資系
20高田製薬株式会社26専業その他
21第一三共エスファ株式会社24新薬系
22武田テバ薬品株式会社 + 武田テバファーマ株式会社24外資系

 
 専業大手3社(東和薬品・沢井製薬・日医工)は、手堅く製品を取り揃えてきた印象です。ニプロESファーマが加わったニプロや新たに登場した卸系の共創未来ファーマが存在感を増している一方、外資大手3社(テバ・サンド・マイラン)の存在感はいまいちです。




8月15日に承認されたAG


 2017年8月には、通常のジェネリックに先行して、4つのAG(キョーリンリメディオのモメタゾン点鼻液、参天アイケアのドルモロール配合点眼液(ドルゾラミド/チモロール配合点眼液)、サンドのトラボプロスト点眼液とエカレボ配合錠(レボドパ/カルビドパ/エンタカポン)が承認されましたが、結局、いずれも12月に薬価収載されることはありませんでした。
 2018年4月に受けるの薬価引下げを考慮し、AG以外のジェネリックに先行して12月に薬価収載するよりも、仮にAG以外のジェネリックと同時に薬価収載することになったとしても、2018年6月以降に薬価収載した方が得策という判断がされたのだと思われます。
 ジェネリック対策には、適応拡大、用法・用量の追加、剤形・規格追加、特許出願などがありますが、オーソライズド・ジェネリック(AG)は、ジェネリック対策の究極の答えなのではないでしょうか。



 次回は、12月8日に薬価基準収載がされたジェネリック医薬品の動向を、ジェネリックが初めて収載された成分に注目して分析していきたいと思います。

2017年12月11日月曜日

ベポタスチン~続報2~

 12月7日に後発医薬品等の薬価基準追補収載が官報告示され、12月8日に薬価基準収載がされました(官報はhttp://kanpou.npb.go.jp/から確認できます)。
 これにより、ベポタスチン~続報~で挙げた注目ポイントの内容が分かってきました。


注目ポイント


  1. 東和薬品、シオノケミカルおよび大興製薬のベポタスチンのジェネリックは12月に薬価収載されるのか?
    → 東和薬品、シオノケミカルおよび大興製薬は、ベポタスチンのジェネリックの12月の薬価収載を見送りました。
  2. ジェネリックが12月に薬価集された場合、いつ発売されるのか?
    → 東和薬品、シオノケミカルおよび大興製薬は、ベポタスチンのジェネリックの12月の薬価収載を見送ったため、早くとも2018年6月以降の発売となります。
  3. 田辺製薬販売が承認を取得したオーソライズド・ジェネリック(AG)は12月に薬価収載されるのか?→ オーソライズド・ジェネリック(AG)(ベポタスチンベシル酸塩錠5mg・10mg「タナベ」/ベポタスチンベシル酸塩OD錠5mg・10mg「タナベ」)が、12月に薬価収載されました。
  4. AGが12月に薬価集された場合、いつ発売されるのか?
    → ニプロESファーマのHPによると
    AGは3月発売予定だそうです
  5. 田辺製薬販売はニプロへ売却され、ニプロESファーマとなったので、AGはどこから発売されるのか?
    → ニプロESファーマのHPから発売されます。


“円満解決”の内容


 12月の薬価基準追補収載から、田辺三菱製薬のプレスリリースの“円満解決”の内容が少しだけ明らかになりました。“円満解決”には次の合意があったと推測されます。

  1. 東和薬品、シオノケミカルおよび大興製薬は、12月にベポタスチンのジェネリックを薬価収載しない。
  2. AGは12月に薬価収載するが、収載後、一定期間は発売しない。



最後に


 仮処分命令の申立ての対象特許である特許4704362と特許4562229は、2017年12月19日に満了しますので、12月20日以降に東和薬品、シオノケミカルおよび大興製薬が原料を生産/輸入し、製剤を製造/輸入し、販促活動しても、その行為自体には特許権の効力は及びません。
 そのため、私は、「AGと東和薬品、シオノケミカルおよび大興製薬のジェネリックは12月に同時に薬価収載され、東和薬品、シオノケミカルおよび大興製薬がジェネリックの発売をAGより遅らせる」というのが、“円満解決”の内容では?と推測していました。
 また、東和薬品、シオノケミカルおよび大興製薬が12月の薬価収載を見送ると、AGに市場を奪われる上に、他のジェネリックメーカーに追いつかれる虞もありますし、薬価改定の影響も受けるため、あまりメリットがないように思えます。
 何故、東和薬品、シオノケミカルおよび大興製薬がこのような“円満解決”に応じたのか、とても気になるところです。
 他方、ベポタスチンで分析したように、医政経発第0605001号に基づけば、本来、AG以外のベポタスチンのジェネリックは2018年2月まで承認されないはずです。そのため、他のジェネリック企業とこ公平という観点からは、東和薬品、シオノケミカルおよび大興製薬のベポタスチンのジェネリックが12月に薬価収載されなかったことは、妥当であると言えると思います。


2017年10月29日日曜日

ベポタスチン~続報~

 “ベポタスチン”で取り上げたベポタスチンに係る特許侵害差止仮処分命令申立事件に続報があったので、ここで紹介したいと思います。


田辺三菱製のプレスリリース


 2017年10月26日付けで田辺三菱製薬から発表されたプレスリリース「アレルギー性疾患治療剤「タリオン®」に関する特許侵害行為差止めに関する仮処分命令申立ての取下げについて」によると、
“アレルギー性疾患治療剤「タリオン®」について、後発品薬価収載希望書を提出した東和薬品、シオノケミカルおよび大興製薬に対して、田辺三菱製薬が保有する物質特許等の侵害行為の差止めを求める仮処分命令の申立てを、2017年9月15日付で東京地方裁判所および大阪地方裁判所にそれぞれ行っておりましたが、今般、各社との協議の結果、円満解決に至りましたので、当社は10月25日付で両地方裁判所に本仮処分命令の申立ての取下げを行いました”
とのことです。

 プレスリリースでは“円満解決”の内容が明らかにされていません。
今後の展開として、

  1. 東和薬品、シオノケミカルおよび大興製薬のベポタスチンのジェネリックが12月に薬価収載されるのか
  2. ジェネリックが12月に薬価集された場合、いつ発売されるのか
  3. 田辺製薬販売が承認を取得したオーソライズド・ジェネリック(AG)は12月に薬価収載されるのか
  4. AGが12月に薬価集された場合、いつ発売されるのか
  5. 田辺製薬販売はニプロへ売却され、ニプロESファーマとなったので、AGはどこから発売されるのか

が注目です。

2017年10月27日金曜日

ロスバスタチン効能追加

  2017年10月25日付けで沢井製薬ファイザーから家族性高コレステロール血症」の効能・効果、用法・用量の一部変更承認がされたというプレスリリースがされました。
「家族性高コレステロール血症」の効能追加については、“8月15日付医薬品承認情報 ~ロスバスタチン 後編~”で分析しましたが、効能追加の時期が予想よりも早く、また、沢井製薬の他に同じタイミングでファイザー(マイラン)が効能追加してきたことはまったく想定外した。



沢井製薬の効能追加


沢井製薬の効能追加が承認された理由


 通知 ”医政経発第0605001号 「医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査及び薬価収載に係る医薬品特許の取扱いについて」”には、
“先発医薬品の有効成分に特許が存在することによって、当該有効成分の製造そのものができない場合には、後発医薬品を承認しないこと。”、“先発医薬品の一部の効能・効果、用法・用量(以下、「効能・効果等」という。) に特許が存在し、その他の効能・効果等を標ぼうする医薬品の製造が可能である場合については、後発医薬品を承認できることとすること。この場合、特許が存在する効能・効果等については承認しない方針であるので、後発医薬品の申請者は事前に十分確認を行うこと。”
と記載されています。
 この医政経発第0605001号に則れば、「家族性高コレステロール血症」効能追加の承認を取得するには、1.「家族性高コレステロール血症」の効能・効果を保護する特許5062940を無効にする、又は、2.特許権者から特許5062940のライセンスを受ける
ことが必要と考えられます。

 沢井製薬は、「家族性高コレステロール血症」の効能・効果を保護する特許5062940に対する無効審判を請求していましたが、途中で取下げています。これは、特許権者からライセンスを受けることを条件に、特許5062940に対する無効審判の取下げに合意したと推測されます。
 そのため、2.に該当し、沢井製薬は、「家族性高コレステロール血症」効能追加の承認を取得できたと思われます。



ファイザーの効能追加


 沢井製薬と同日にファイザー(マイラン)が「家族性高コレステロール血症」の効能追加することはまったく想定していませんでした
 それは「家族性高コレステロール血症」の効能・効果を保護する特許5062940に対して無効審判請求をしていたのは沢井製薬のみで、“8月15日付医薬品承認情報 ~ロスバスタチン 前編~”でジェネリック各社の提携関係を分析した結果では、沢井製薬とファイザー(マイラン)はそれぞれ単独であったからです。


ファイザーの効能追加が承認された理由


 特許5062940は現在も有効に維持されているので、1.ではなく2.に該当すると考えられます。
 沢井製薬は、無効審判を請求することで特許権者からライセンスを引出したと推測されますが、ファイザー(マイラン)が特許5062940に対して無効審判を請求した形跡はないので、無効審判以外の方法(例えば、特許権者と直接コンタクトしてライセンス交渉をする等)で特許権者からライセンスを引出したと思われます。
 日本でAG以外のジェネリックが無効審判等を経ることなく、特許権者からライセス受けるというのは、とても珍しいケースだと思います(私の知る限りでは初めてです)。
 また、無効審判等は公開されるので、他社に動向を知られてしまいますが、無効審判等を経ていないファイザー(マイラン)の存在を、沢井製薬が予想することは困難であったでしょう。沢井製薬は自分たち以外に効能追加してくる会社はいなだろうと予想していたのではないでしょうか?




家族性高コレステロール血症」の効能追加の時期


予想していた効能追加の時期


 “8月15日付医薬品承認情報 ~ロスバスタチン 後編~”では、沢井製薬は、“8月15日に承認を取得した後、直ちに「家族性高コレステロール血症」の効能追加の一変を行い、早ければ来年の2月頃には「家族性高コレステロール血症」の効能が承認される”と予想しました。
 しかし、今回、予想よりも4ヶ月も早く効能追加が承認されました。なぜ予想より早く承認されたのでしょうか?



来年2月と予想した理由


 少し古いですが、一変申請の事務処理期間に関する“薬食審査発第0522001号 「医療用医薬品の承認事項一部変更承認申請に係る標準的事務処理期間の取扱いについて」”という通知には、製造方法欄の変更を伴わない一変申請の総審査期間は、中央値を6ヶ月(うち、行政側の事務処理期間を5ヶ月)となるよう努める。また、その状況を踏まえ、さらなる改善策を検討する。”とされています。
 そのため、8月15日の承認から6ヶ月後である来年2月を一変承認の時期と予想していました。


最近の傾向


 ロスバスタチンに似たような一変申請の事例がないか調べてみたところ、モンテルカスト錠が見つかったので、紹介したいと思います。
 モンテルカスト錠は、アレルギー性鼻炎について、物質特許(特許2501385)が2016年2月26日に満了し、気管支喘息については、2016年10月14日に満了しました。
効能・効果特許2501385(物質特許)
気管支喘息10/14/2016
アレルギー性鼻炎2/26/2016
そのため、ジェネリックは2016年8月15日にアレルギー性鼻炎の効能・効果のみで承認されました。ジェネリックの承認後、気管支喘息の効能追加の一変申請がされ、約3ヶ月後の2016年11月9日に一変申請が承認されています。
 2月/8月にジェネリックが承認された後に効能追加の一変申請をする場合、6月/12月の薬価収載に間に合わせるといった柔軟な対応を、医薬品医療機器総合機構と厚生労働省は取っているようです。



最後に


 10月25日時点では、沢井製薬をファイザー(マイラン)以外に「家族性高コレステロール血症」の効能追加の承認を取得したと発表した会社はなく、第一三共エスファのAGを除き、先発製品と同じ効能・効果のジェネリックは沢井製薬とファイザー(マイラン)のみです。他方、「高コレステロール血症」の患者数と比べると「家族性高コレステロール血症」の患者数は多くありません家族性高コレステロール血症」の効能追加が、市場にどのようなインパクトがあるのかとても興味があるところです。
 また、沢井製薬とファイザー(マイラン)の効能追加を受けて、他のジェネリックがどのようなう動きを見せるのにも注目です。







2017年10月16日月曜日

フェブキソスタット

 フェブキソスタットに係る特許3547707の無効審判事件(審判番号:2016-800037)の審決が下りたので、今回はフェブキソスタットについて、分析したいと思います。


1.フェブキソスタットの製品情報


有効成分
一般名: フェブキソスタット
効能・効果
1.痛風、高尿酸血症
2.がん化学療法に伴う高尿酸血症
剤形・規格
フェブリク錠10mg /20mg/40mg (2011年3月薬価収載)
製造販売元
帝人ファーマ


2.フェブキソスタットの基本特許


2-1.基本特許


 特許 2706037はフェブキソスタットの物質特許、特許2725886は痛風/高尿酸血症の医薬用途特許、特許5907396は腫瘍融解症候群の治療薬/予防の医薬用途特許です。
フェブキソスタットの物質特許と痛風/高尿酸血症の医薬用途特許が既に満了し痛風/高尿酸血症の再審査期間が2019年1月20日に終了することから、フェブキソスタットのジェネリックは、2019年2月申請~2020年2月承認~2020年6月薬価収載と考えられます。


2-2.その他の関連特許


 基本特許以外に先発製剤を保護するような特許がないか調べたところ、次のような特許が見つかりました。


 特許 3547707は結晶特許、特許4084309は製剤特許、特許3202607と特許2834971は製剤特許で、いずれも先発製品の製造販売承認に基づく存続期間の延長登録がされていることから、先発製品を保護すると推測されます。




3.無効審判事件(審判番号:2016-800037)


 無効審判(審判番号:2016-800037)の請求人は日本ケミファで、対象特許は結晶特許である特許 3547707です。特許庁は、特許 3547707の請求項のち、一部を無効と判断し、現在、審決取取消訴訟が知的財産高等裁判所に係属しています。
 
 各請求項の内容と無効審判の結果を下の表にまとめてみました。

内容無効審判請求特許庁の判断
請求項1結晶A(X線粉末回折)無効(進歩性なし)
請求項2結晶B(X線粉末回折)×-
請求項3結晶C(X線粉末回折)無効(進歩性なし)
請求項4結晶D(X線粉末回折)×-
請求項5結晶G(X線粉末回折)無効(進歩性なし)
請求項6結晶A(赤外分光分析)無効(進歩性なし)
請求項7結晶B(赤外分光分析)×-
請求項8結晶C(赤外分光分析)無効(進歩性なし)
請求項9結晶D(赤外分光分析)×-
請求項10結晶G(赤外分光分析)無効(進歩性なし)
請求項11非晶質×-
請求項12結晶Aの製法有効
請求項13結晶Bの製法×-
請求項14結晶Cの製法無効(進歩性なし)
請求項15結晶Dの製法×-
請求項16結晶Gの製法有効
請求項17結晶Gの製法有効
請求項18結晶Gの製法有効
請求項19非晶質の製法×-

結晶A、結晶C、結晶G及びこれら結晶の製法に関する請求項に対して無効審判が請求され、結晶A、結晶C、結晶G及び結晶Cの製法が無効と判断されました。




4.日本ケミファが無効審判を請求した狙い


4-1.仮説


 結晶A、結晶C、結晶Gに関する請求項に対して無効審判を請求していることから、日本ケミファは、いずれかの結晶を使用したジェネリックを開発していると考えられます。そこで、次の3つの仮説を立て、検証していきたいと思います。

仮説①:結晶Aを使用したジェネリックを2020年6月に発売
仮説②:結晶Cを使用したジェネリックを2020年6月に発売
仮説③:結晶Gを使用したジェネリックを2020年6月に発売


4-2.仮説の検証


4-2-1.先発製品の結晶形は?


 結晶特許(特許 3547707)は、存続期間の延長登録がされているため、先発製品に含まれるフェブキソスタットは、結晶A、B、C、D、G又は非晶質のいずれかと考えられます。例えば、結晶特許(特許 3547707)の請求項1は、次のような内容です。

“【請求項1】
反射角度2θで表して、ほぼ6.62°、7.18°、12.80°、13.26°、16.48°、19.58°、21.92°、22.68°、25.84°、26.70°、29.16°、および36.70°に特徴的なピークを有するX線粉末回折パターンを示す、2-(3-シアノ-4-イソブチルオキシフェニル)-4-メチル-5-チアゾールカルボン酸の結晶多形体。”

ここで、同様に存続期間の延長登録がされている製剤特許(特許4084309)の請求項を見てみます。

“【請求項1】
反射角度2θで表して6.62°、7.18°、12.80°、13.26°、16.48°、19.58°、21.92°、22.68°、25.84°、26.70°、29.16°、及び36.70°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを示す2-(3-シアノ-4-イソブチルオキシフェニル)-4-メチル-5-チアゾールカルボン酸のA晶、賦形剤、結合剤、及び崩壊剤を含有する、痛風または高尿酸血症治療用の錠剤であって、
該A晶の平均粒子径が12.9μm以上26.2μm以下であり、
該賦形剤が、乳糖、および部分アルファー化デンプンから選ばれる1種以上であり、
該結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロースである錠剤。”
 
結晶特許(特許 3547707)と製剤特許(特許4084309)の請求項1を比較してみると、どちらも同じ粉末X線回折パターンを持つ結晶形(A結晶)を含んでいることが分かります。
製剤特許(特許4084309)の独立請求項は請求項1のみで、結晶A以外の結晶形は記載されていないため、先発製品に含まれるフェブキソスタットは結晶Aであると考えられます。



4-2-2.特許3547707と特許4084309から分かること


 特許3547707と特許4084309の明細書を確認したところ、結晶A、B、C、D、Gと非晶質について、次のようなことが分かりました。

特許3547707
結晶の保存安定性その他の特徴
A結晶安定-
B結晶結晶転移あり-
C結晶安定工業的製造が
難しい
D結晶結晶転移あり-
G結晶安定加熱減圧乾燥で
B結晶へ転移
非晶質結晶転移あり-


特許4084309
溶解速度製剤製造中の
結晶転移
製剤保存中の
結晶転移
製剤の均一性製剤製造直後の
溶出製
製剤保存後の
溶出製
A結晶
非晶質>A>B>D>G>C
結晶転移なし結晶転移なし変化なし
B結晶結晶転移あり結晶転移あり遅延
C結晶結晶転移あり結晶転移あり遅延
D結晶結晶転移あり結晶転移あり遅延
G結晶結晶転移あり---
非晶質-----


4-2-3.結晶Aを採用した理由


 特許3547707と特許4084309の明細書から、結晶Aは他の結晶形よりも製剤中で安定あり、溶出性もいいことが分かります。そのため、先発製品は結晶Aを採用したと推測されます。



4-2-4.日本ケミファの特許出願


 特許出願から日本ケミファが使用しようとしている結晶形を推測できないか試みるために、日本ケミファの出願を検索したところ、次の3件の特許出願がヒットしてきました。これらの特許出願の内容を確認したころ、いずれも結晶Cに関する出願でした。

公報番号発明の名称請求項1出願日
特開2017-1286162-[3-シアノ-4-(2-メチルプロポキシ)フェニル]-4-メチルチアゾール-5-カルボン酸の小型化結晶、その微粉化物及びこれらを含有する固形製剤長径の長さが100μm以下の結晶のみからなり、かつA晶、B晶、D晶、G晶、及び/又は非晶質体の含有量が7重量%以下である2-[3-シアノ-4-(2-メチルプロポキシ)フェニル] -4-メチルチアゾール-5-カルボン酸のC晶の微粉化物。5/8/2017
特再公表2015-635612-[3-シアノ-4-(2-メチルプロポキシ)フェニル]-4-メチルチアゾール-5-カルボン酸の小型化結晶、その微粉化物及びこれらを含有する固形製剤長径の長さが実質的に約200μm以下の結晶のみからなる2-[3-シアノ-4-(2-メチルプロポキシ)フェニル]-4-メチルチアゾール-5-カルボン酸の小型化C晶10/22/2014
WO16-1712542-[3-シアノ-4-(2-メチルプロポキシ)フェニル]-4-メチルチアゾール-5-カルボン酸の結晶、その製造方法、及びそれらの利用2-[3-シアノ-4-(2-メチルプロポキシ)フェニル]-4-メチルチアゾール-5-カルボン酸のC晶及び2-[3-シアノ-4-(2-メチルプロポキシ)フェニル]-4-メチルチアゾール-5-カルボン酸の非晶質体を含む混合物を常温より高い温度に加熱して得られる2-[3-シアノ-4-(2-メチルプロポキシ)フェニル]-4-メチルチアゾール-5-カルボン酸のC晶4/22/2016

また、各出願と特許3547707に対する無効審判を時系列に並べてみると、無効審判請求前後で一貫して結晶Cに関する出願をしていることが分かります。




これらから日本ケミファは結晶Cを使用としようとしていることがうかがえます。



4-2-5.日本ケミファの特許出願から分かること


 日本ケミファの特許出願の明細書を確認し、各出願の主な発明とそれらの効果をまとめてみました。

公報番号主な発明発明の効果
特開2017-128616フェブキソスタットのC晶の微粉化物
高い溶出性と高い安定性を有し、かつ、溶出特性のばらつきが少ない固形製剤を製造できる
特再公表2015-63561フェブキソスタットの小型化C晶
WO16-171254フェブキソスタットのC晶と非晶質を含む混合物を常温より高い温度に加熱して得られるフェブキソスタットのC晶高純度なフェブキソスタットのC晶を製造できる

これらから日本ケミファは高純度で小型化された結晶Cを使用することで、高い溶出性・安定性を有するフェブキソスタット製剤を開発しようと試みていることがうかがえます。


4-2-6.仮説①の検証


 結晶形は、製剤の安定性や溶出性に影響を与えるので、先発製品と同じ結晶を使用するために無効審判を請求するということはあり得ます。
ですが、日本ケミファの特許出願は結晶Cの使用を示唆しているという点で一致していません。また、結晶Aを含む製剤に関する製剤特許(特許4084309)に対しては、無効審判を請求しておらず、結晶Aに関する特許出願がないことも不自然です。


4-2-7.仮説②の検証


 日本ケミファの特許出願は結晶Cの使用を示唆しているため、仮説②は有力な説のように見えます。
ですが、結晶を使用したいのであれば、C結晶に関する請求項のみに無効審判を請求すればいいはずです。わざわざA結晶とG結晶に関する請求項にも無効審判を請求する必要はありません。
更に、先発製品は結晶Aを使用し、先発製品の製造販売承認に基づき、結晶特許(特許 3547707)の存続期間が、2019/6/18から2024/6/18まで延長されています。そうすると、フェブキソスタットの結晶Aでの製造販売承認を理由として延長された特許権の効力は、結晶Cには及ばないと考えるのが自然です。つまり、結晶Cを使用するため、無効審判を請求する必要はないわけです。


4-2-8.仮説③の検証


 製剤特許(特許4084309)では、結晶Gの製剤は製剤の均一性が悪かったとされていますので、結晶Aや結晶Cを使用しようとするのが自然です。また、仮説②の検証と同様に、結晶Gを使用するため、無効審判を請求する必要はありません。


4-3.新たな仮説


 仮説①②③のいずれでもクリアーな説明ができず、疑問が残ります。そこで、新たな仮説を立ててみます。

仮説④:
結晶Cを使用してジェネリックを開発しているが、製造中/保存中の結晶転移により、結晶Aが混入し、結晶特許(特許 3547707)に基づく権利行使のリスクがある
仮説⑤:
とりあえず安定な結晶A、C、Gに無効審判をし、結果次第で使用する結晶形を選択する

仮説④と⑤であれば、仮説①~③よりも日本ケミファの無効審判と特許出願との関係を自然に説明できるのではないでしょうか。


5.最後に


 今回は、仮説①~⑤を立て、日本ケミファの無効審判の狙いを分析してみました。今後、日本ケミファがジェネリックを発売し、侵害訴訟に発展すれば、実際に日本ケミファが使用した結晶形等が判明してくると思います。今後の動向に注目していきたいと思います。