2017年9月1日金曜日

8月15日付医薬品承認情報 ~モメタゾン点鼻液 中編~

 前回に続き、キョーリンリメディオが承認を取得したモメタゾン点鼻液について分析します。

特許3480736の満了前にAGの承認を取得した理由は?


一般的なタイムライン


 特許3480736の満了日が2019年10月31日の場合、通常のジェネリック医薬品は、2019年2月申請~2020年2月承認・6月収載となります。先行してオーソライズド・ジェネリック(AG)が発売されるケースがありますが、通常のジェネリックよりも半期早い2018年8月申請~2019年8月承認というタイムラインとなるのが一般的だと思います(例えば、第一三共エスファのオルメサルタンやロスバスタチン)。

特許3480736の満了前にAGの承認を取得した理由


 理由は、ジェネリック医薬品メーカーが特許3480736に対して無効審判が請求されているからだと考えられます。特許3480736が無効になってしまうと、2020年2月承認・6月収載というスタイムラインよりも早くジェネリック医薬品の参入されてしまいます。そこで、杏林製薬のグループ会社であるキョーリンリメディオが、先手を打って再審査期間終了後にAGを申請してきたと考えられます。


AG以外のジェネリックの承認はいつ?


特許3480736に対する無効審判の状況


 無効審判を請求しているのは、東和薬品と東興薬品工業の2社で、それぞれの状況は以下の通りです。
 


 特許庁は“特許は無効でない”と判断しましたが、知財高裁は“特許は無効でない”という特許庁の判断の判断を取り消し、それ不服とした最高裁への上告が不受理となったため、再度、特許庁で審理されることになっています。特許情報プラットフォームで確認した限り、特許庁での審理はあまり進んでいないようです。


東和薬品と東興薬品工業が無効審判を請求した狙い


 無効審判を請求している東和薬品と東興薬品工業が、モメタゾン点鼻液のジェネリックを開発しているのは間違いないでしょう。そして、無効審判の請求時期から判断すると、再審査期間終了後の2016年8月申請~2017年8月承認を狙っていたと考えられます。医薬品医療機器号機構(PMDA)のHPでMF登録状況を確認したところ、2016年7月から8月にかけてMF登録がされていることとも合致します。


なぜAG以外のジェネリックは8月承認されなかったのか?


 残念ながら、東和薬品と東興薬品工業のジェネリックが8月に承認されなかったか理由は分析できませんでしたが、

  1. 何らかの理由で開発・製造販売承認申請が遅延した、
  2. 何らかの理由で製造販売承認申請の審査が遅延した、
  3. 無効審判の結論が出ていないため、医薬品医療機器総合機構・厚生労働省が製造販売承認を下ろさなかった(いわゆる“パテントリンケージ”)、

といった理由が想定されます。


AG以外のジェネリックの承認はいつ?


 上記1.~3.のような理由でAG以外のジェネリックが8月に承認されなかったと想定されるものの、はっきりとした理由が分析できなかったため、ジェネリックの承認時期を予測することは困難です。しかし、東和薬品と東興薬品工業が、モメタゾン点鼻液のジェネリックを開発しているのは間違いないでしょうから、早ければ2018年2月には承認されると思われます。
 但し、もし上記③の理由であった場合、現在の無効審判の進行状況から、2018年2月までに審決が下りる見込みは薄いと予想され、2018年8月以降にずれ込むというケースも起こり得ます。

 次回も引き続きモメタゾン点鼻液について分析します。

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