2017年9月26日火曜日

8月15日付医薬品承認情報 ~オルメサルタン~

 今回は21社・103品目が承認されたオルメサルタンについて分析します。


オルメサルタンの製品情報

有効成分
一般名:オルメサルタン メドキソミル
効能・効果
高血圧症
剤形・規格
オルメテック錠5mg(2006年6月薬価収載)
オルメテック錠10mg(2004年4月薬価収載)
オルメテック錠20mg(2004年4月薬価収載)
オルメテック錠40mg(2010年4月薬価収載)
オルメテックOD錠5mg(2017年6月薬価収載)
オルメテックOD錠10mg(2015年12月薬価収載)
オルメテックOD錠20mg(2015年12月薬価収載)
オルメテックOD錠40mg(2015年12月薬価収載)
製造販売元
第一三共株式会社


オルメサルタン/アゼルニジピン配合錠の製品情報

有効成分
一般名:オルメサルタン メドキソミル/アゼルニジピン
効能・効果
高血圧症
剤形・規格
レザルタス配合錠LD(2010年4月薬価収載)
レザルタス配合錠HD(2010年4月薬価収載)
製造販売元
第一三共株式会社




オルメサルタンの基本特許


基本特許


 オルメサルタン単剤の基本特許として、オルメサルタンの物質特許が、オルメサルタン配合剤の基本特許として、オルメサルタンの物質特許に加え、アゼルニジピンの物質特許とオルメサルタンとアゼルニジピンの組合せに関する配合特許が登録されています。













オルメサルタン単剤


 AG以外のジェネリックは、オルメサルタンの物質特許が2017年2月21日に満了したため、2016年8月申請~2017年8月承認となっています。
 一方、第一三共エスファのオーソライズド・ジェネリック(AG)であるオルメサルタンOD錠「DSEP」とオルメサルタン錠「DSEP」は、特許権者から許諾を得ていますので、AG以外のジェネリックよりも半期早い2016年2月申請~2017年2月承認となっています。

 「特許が2月21日に満了するなら、2月に承認されるのでは?」と思った方もいると思います。私も不思議だったので、少し調べてみたところ、次のような通知がみつかりました。

医政発0210第1号通知 「医療用医薬品の薬価基準収載等に係る取扱いについて」
“後発医薬品(新医薬品、報告品目及び新キット製品以外の医療用医薬品をいう。以下同じ。)の薬価基準への収載手続きは、後発医薬品の収載を希望する製造販売業者(以下「後発医薬品収載希望者」という。)が、別紙様式1に定める薬価基準収載希望書を提出することにより行われるものであること。
なお、当該希望書は、原則として、2月15日及び8月15日(当該日が土曜日又は日曜日に該当するときは、その日後においてその日に最も近い平日とする。)までに医薬品医療機器法に基づく承認を受けた当該後発医薬品について、それぞれ当該年の3月10日及び9月10日までの指定する日までに提出すること。“
“後発医薬品 6月及び12月を標準とする。”

医政経発第0605001号 「医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査及び薬価収載に係る医薬品特許の取扱いについて」
“特許の存否は承認予定日で判断するものであること”

これらの通知から、
  1. ジェネリックの薬価収載のタイミングは6月と12月の年2回
  2. 2月15日/8月15日までに承認されないと6月/12月に薬価収載できない
  3. 2月21日に特許が満了する場合、ジェネリックは2月15日までには承認されないから、6月収載されない
ということが分かりました。
 そうすると、2017年2月21日に特許が満了するオルメサルタンのジェネリックは、2017年2月承認・6月薬価収載というサイクルに乗ることができないので、結局、2017年8月承認・12月薬価収載というサイクルになってしまったと推測されます。
 特許満了日が2月15日/8月15日をまたぐかどうかでジェネリックの参入が6ヶ月も違ってくるわけです。



オルメサルタン/アゼルニジピン配合剤


 オルメサルタンとアゼルニジピンの組合せに関する配合特許(特許3874419)が2027年4月に満了します。そのため、この特許が有効である限り、2027年8月までオルメサルタン/アゼルニジピン配合剤のジェネリックは承認されないと思われます。
 一方、第一三共エスファのオーソライズド・ジェネリック(AG)であるオルアゼ配合錠「DSEP」は、特許権者から許諾を得ていますので、2017年2月に既に承認されています。




各社の提携関係


 現在公開されている情報に基づき、承認された26社の提携関係を普通錠とOD錠に分けて分析してみました。

普通錠




















 ダイト、武田テバファーマ、エルメッドエーザイと共創未来ファーマについては、現時点で製品情報が公開されていなかったため、競合関係を分析することはできませんでした(※製品情報の公開後、更新予定)。


OD錠





















21社中、OD錠のみが2社、普通錠のみが13社、普通錠とOD錠の両方が6社という結果でした。





 承認取得26社中、17社がODの承認を取得したロスバスタチンと比較すると、オルメサルタンではOD錠の承認を取得した会社数は少ないです。先発企業である第一三共は、既に普通錠の販売を中止し、OD錠への切り替えを進めていますし、第一三共エスファのAGはOD錠のみの薬価収載ですので、普通錠のみのジェネリックにどのくらい需要があるかが気になるところです。
 また、外資系最大手のサンド・テバ・マイランの3社中、OD錠の承認を取得したのは、マイラン(ファイザー)のみでしたが、単独ではなくニプロのグループに属していました。やはり外資系メーカーは、OD錠のような日本特有の製剤開発は不得手であることがうかがえます。




オルメサルタン/アゼルニジピン配合剤のジェネリックはいつ?


配合特許(特許3874419)の満了前にAGの承認を取得した理由は?


 オルメサルタンとアゼルニジピンの組合せに関する配合特許(特許3874419)が2027年4月まで存続するので、この特許が有効である限り、2027年8月までオルメサルタン/アゼルニジピン配合剤のジェネリックは承認されません
このような場合、先行してAGの承認を取得するとしても、オルメサルタン単剤のようにAG以外のジェネリックよりも半期早い2026年8月申請~2027年8月承認というタイムラインとなるのが一般的だと思います。
 では、なぜ第一三共エスファは2017年2月にオルメサルタン/アゼルニジピン配合剤のAGであるオルアゼ配合錠「DSEP」の承認を取得したのでしょうか?
 理由は、特許3874419に対して無効審判が請求されていたからだと考えられます。特許3874419が無効になってしまうと、2027年8月承認・12月収載というタイムラインよりも早くジェネリック医薬品の参入されてしまいます。そこで、第一三共は、先手を打ってオルメサルタン単剤と同時期にAGの承認を取得してきたと考えられます。



特許3874419に対する無効審判の状況

審判番号:2016-800080
無効審判請求人:ニプロ 
事件の経過:
2016年7月審判請求→2017年1月口頭審理→2月審理終結通知→3月審決→5月確定
無効理由:進歩性(特許法29条2項)
結果:特許3874419を無効とすることはできない

 無効審判を請求したのはニプロです。特許庁は“特許は無効でない”という審決を下し、ニプロが知財高裁に出訴せず、この審決は確定しました。そのため、特許3874419は有効に維持されている状態です。



ニプロが無効審判を請求した狙い


 二プロは、他のジェネリックよりも早くとオルメサルタン/アゼルニジピン配合錠のジェネリックの承認を取得し、市場に参入することを意図し、特許3874419に対して無効審判を請求した考えられます。無効審判の審理には、10ヶ月程度はかかるため、2016年7月という無効審判請求時期から考えると、最速で2017年8月承認を狙っていたのではないでしょうか。



AG以外のジェネリックの承認はいつ?


 ニプロによる無効審判は、“特許は無効でない”という審決で確定しいるため、新たに無効審判が請求され、特許3874419が無効という判断がされない限り、特許3874419の満了後である2027年8月までオルメサルタン/アゼルニジピン配合剤のジェネリックは承認されないと考えられます。
 


AGの収載はいつ?


 特許3874419が有効である限り、2027年8月までAG以外のオルメサルタン/アゼルニジピン配合剤のジェネリックは承認されないと考えられます。ジェネリックが参入しくる見込みがないのであれば、AGを薬価収載する理由はありませんから、AGの薬価収載は、AG以外のジェネリックが参入する半期前の2027年6月かAG以外のジェネリックと同時の12月になるのではないでしょうか。
 また、特許3874419に対して新たに無効審判が請求された場合、第一三共は、審判の進行状況を勘案し、AGの薬価収載時期を判断してくると思われます(例えば、「8月に審決予告がされ、特許が無効と判断される恐れがある場合、12月に薬価収載する」、「8月に審理終結通知がされ、特許が維持できそうな場合、12月の薬価収載は見送る」など)。
 
 特許3874419は、AG以外のジェネリックの承認とAGの薬価収載を左右する要因ですので、特許3874419の今後の動向が注目されます。


 2017年8月に承認された製品のうち、初承認の製品と大型製品については、一通り分析したかなと思っています。もし分析してみたら面白そうな製品などがありましたら、コメントやリクエストをいただけると幸いです。



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