2017年10月13日金曜日

ピタバスタチン

 2017年10月11日付けで興和から「高コレステロール血症治療剤「リバロ」に対する特許権侵害訴訟の勝訴判決について」というプレスリリースがされたので、今回はピタバスタチンについて分析します。



ピタバスタチンの製品情報

有効成分
一般名:ピタバスタチン カルシウム
効能・効果
高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症
剤形・規格
リバロ錠1mg(2003年9月薬価収載)
リバロ錠2mg(2003年9月薬価収載)
リバロ錠4mg(2012年6月薬価収載)
リバロOD錠1mg(2013年6月薬価収載)
リバロOD錠2mg(2013年6月薬価収載)
リバロOD錠4mg(2013年12月薬価収載)
製造販売元
製造販売元/興和, 販売元/興和創薬, 提携/日産化学工業




興和のプレスリリース


 興和のプレスリリースによれば、
“東和薬品に対し、興和が保有する高コレステロール血症治療剤「リバロ錠」(一般名:ピタバスタチンカルシウム)」の医薬特許(特許第5190159号)の侵害を理由として、同社が製造販売する「リバロ」の後発医薬品である『ピタバスタチンCa・OD 錠 4mg「トーワ」』の製造販売の差し止めを求める訴訟を東京地裁に提起していましたが、2017年9月29日付で、興和の請求を全面的に認める判決が言い渡された”
とのことです。




対象特許と対象製品


対象特許


 興和のレスリリースには、対象特許として特許5190159が記載されていました。特許5190159の内容は、
“【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)ピタバスタチン又はその塩;
(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上;
を含有し、かつ、水分含量が2.9質量%以下である固形製剤が、気密包装体に収容してなる医薬品。”
“【請求項6】
  次の成分(A)及び(B):
(A)ピタバスタチン又はその塩;
(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上;
を含有し、かつ、水分含量が2.9質量%以下である固形製剤。”
です。
 リバロOD錠にはクロスポビドンが含まれているため、特許5190159は先発製品のOD錠を保護する製剤特許と考えられます。


対象製品


 興和のレスリリースには、対象製品としてピタバスタチンCa・OD 錠 4mg「トーワ」が記載されていました。
 ピタバスタチンCa・OD 錠 4mg「トーワ」は、2014年8月に承認され、同年12月に薬価収載されています。また、ピタバスタチンCa・OD 錠 4mg「トーワ」の添付文書に記載されている添加剤は、
“D-マンニトール、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、メタケイ酸アルミン酸Mg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、タルク、黄色三二酸化鉄、酸化チタン、アスパルテーム(L-フェニルアラニン化合物)、香料、ステアリン酸Mg、その他3成分”
です。


対象特許と対象製品の対比


 特許5190159のポイントは、①ピタバスタチンを含むこと、②カルメロース/クロスポビドン/結晶セルロースのうち、少なくとも1つを含むこと、③水分含量が2.9質量%以下の固形製剤であることです。
 ピタバスタチンCa・OD 錠 4mg「トーワ」の添付文書には、カルメロース/クロスポビドン/結晶セルロースは記載されていませんが、“その他3成分”の中に含まれていると考えられます。また、ピタバスタチンCa・OD 錠 4mg「トーワ」の水分含量は、添付文書等から把握することはできませんが、侵害が認められたということは、2.9質量%以下と考えられます。



その他のジェネリックは?


 東和薬品以外の会社からもピタバスタチンのジェネリックが販売されています。その他のジェネリックに使用されている添加剤をまとめてみました。

OD錠
販売名カルメロース/クロスポビドン/結晶セルロースの有無
リバロOD錠1mg
リバロOD錠2mg
リバロOD錠4mg
クロスポビドン
ピタバスタチンカルシウムOD錠1mg「日医工」
ピタバスタチンカルシウムOD錠2mg「日医工」
ピタバスタチンカルシウムOD錠4mg「日医工」
ピタバスタチンCa・OD錠1mg「杏林」
ピタバスタチンCa・OD錠2mg「杏林」
ピタバスタチンCa・OD錠4mg「杏林」
ピタバスタチンCa・OD錠1mg「サワイ」
ピタバスタチンCa・OD錠2mg「サワイ」
ピタバスタチンCa・OD錠4mg「サワイ」
ピタバスタチンCa・OD錠1mg「トーワ」
ピタバスタチンCa・OD錠2mg「トーワ」
ピタバスタチンCa・OD錠4mg「トーワ」
? (その他3成分)
ピタバスタチンCa・OD錠1mg「ファイザー」
ピタバスタチンCa・OD錠2mg「ファイザー」
ピタバスタチンCa・OD錠4mg「ファイザー」
ピタバスタチンCa・OD錠1mg「明治」
ピタバスタチンCa・OD錠2mg「明治」
ピタバスタチンCa・OD錠4mg「明治」
ピタバスタチンCa・OD錠1mg「JG」
ピタバスタチンCa・OD錠2mg「JG」
ピタバスタチンCa・OD錠4mg「JG」
ピタバスタチンCa・OD錠1mg「MEEK」
ピタバスタチンCa・OD錠2mg「MEEK」

普通錠
販売名カルメロース/クロスポビドン/結晶セルロースの有無
リバロ錠1mg
リバロ錠2mg
リバロ錠4mg
ピタバスタチンカルシウム錠1mg「テバ」
ピタバスタチンカルシウム錠2mg「テバ」
ピタバスタチンカルシウム錠4mg「テバ」
? (その他2成分)
ピタバスタチンカルシウム錠1mg「日医工」
ピタバスタチンカルシウム錠2mg「日医工」
ピタバスタチンカルシウム錠4mg「日医工」
ピタバスタチンカルシウム錠1mg「モチダ」
ピタバスタチンカルシウム錠2mg「モチダ」
ピタバスタチンカルシウム錠4mg「モチダ」
? (その他1成分)
ピタバスタチンカルシウム錠1mg「KO」
ピタバスタチンカルシウム錠2mg「KO」
ピタバスタチンカルシウム錠4mg「KO」
結晶セルロース/クロスポビドン
ピタバスタチンカルシウム錠1mg「ZE」
ピタバスタチンカルシウム錠2mg「ZE」
ピタバスタチンカルシウム錠4mg「ZE」
? (その他1成分)
ピタバスタチンCa錠1mg「アメル」
ピタバスタチンCa錠2mg「アメル」
ピタバスタチンCa錠4mg「アメル」
ピタバスタチンCa錠1mg「科研」
ピタバスタチンCa錠2mg「科研」
ピタバスタチンCa錠4mg「科研」
? (その他1成分)
ピタバスタチンCa錠1mg「杏林」
ピタバスタチンCa錠2mg「杏林」
ピタバスタチンCa錠4mg「杏林」
ピタバスタチンCa錠1mg「ケミファ」
ピタバスタチンCa錠2mg「ケミファ」
ピタバスタチンCa錠4mg「ケミファ」
ピタバスタチンCa錠1mg「サワイ」
ピタバスタチンCa錠2mg「サワイ」
ピタバスタチンCa錠4mg「サワイ」
ピタバスタチンCa錠1mg「サンド」
ピタバスタチンCa錠2mg「サンド」
ピタバスタチンCa錠4mg「サンド」
クロスポビドン
ピタバスタチンCa錠1mg「三和」
ピタバスタチンCa錠2mg「三和」
ピタバスタチンCa錠4mg「三和」
ピタバスタチンCa錠1mg「タカタ」
ピタバスタチンCa錠2mg「タカタ」
ピタバスタチンCa錠4mg「タカタ」
? (その他1成分)
ピタバスタチンCa錠1mg「ツルハラ」
ピタバスタチンCa錠2mg「ツルハラ」
ピタバスタチンCa錠4mg「ツルハラ」
ピタバスタチンCa錠1mg「トーワ」
ピタバスタチンCa錠2mg「トーワ」
ピタバスタチンCa錠4mg「トーワ」
ピタバスタチンCa錠1mg「日新」
ピタバスタチンCa錠2mg「日新」
ピタバスタチンCa錠4mg「日新」
ピタバスタチンCa錠1mg「ファイザー」
ピタバスタチンCa錠2mg「ファイザー」
ピタバスタチンCa錠4mg「ファイザー」
? (その他1成分)
ピタバスタチンCa錠1mg「明治」
ピタバスタチンCa錠2mg「明治」
ピタバスタチンCa錠4mg「明治」
ピタバスタチンCa錠1mg「DK」
ピタバスタチンCa錠2mg「DK」
ピタバスタチンCa錠4mg「DK」
ピタバスタチンCa錠1mg「EE」
ピタバスタチンCa錠2mg「EE」
ピタバスタチンCa錠4mg「EE」
? (その他1成分)
ピタバスタチンCa錠1mg「FFP」
ピタバスタチンCa錠2mg「FFP」
ピタバスタチンCa錠4mg「FFP」
? (その他1成分)
ピタバスタチンCa錠1mg「JG」
/ピタバスタチンCa錠4mg「JG」
ピタバスタチンCa錠1mg「MEEK」
ピタバスタチンCa錠2mg「MEEK」
ピタバスタチンCa錠4mg「MEEK」
ピタバスタチンCa錠1mg「NP」
ピタバスタチンCa錠2mg「NP」
ピタバスタチンCa錠4mg「NP」
? (その他1成分)
ピタバスタチンCa錠1mg「TCK」
ピタバスタチンCa錠2mg「TCK」
ピタバスタチンCa錠4mg「TCK」
ピタバスタチンCa錠1mg「YD」
ピタバスタチンCa錠2mg「YD」
ピタバスタチンCa錠4mg「YD」
ピタバスタチンCa錠1mg「YD」
ピタバスタチンCa錠2mg「YD」
ピタバスタチンCa錠4mg「YD」

 東和薬品以外の会社のOD錠のジェネリックは、カルメロース/クロスポビドン/結晶セルロースを含んでいませんでした。
 普通錠のジェネリックでは、結晶セルロース/クロスポビドンを含む製品や添付文書に“その他○成分”と記載された製品がありましたが、今のところ、普通錠のジェネリックを対象とした訴訟は確認されていません



最後に


 東和薬品のピタバスタチンOD 錠は、 4mg以外に1mgと2mgの規格があります。4mg以外の規格が訴訟の対象となっていないか気になります。また、東和薬品は特許5190159に対して無効審判請求していないため、訴訟の中でどういう主張をしていたのかも気になるところです。
 いずれ裁判所のHPに判決文が掲載されると思うので、掲載後、内容を見てみたいと思います。





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