2018年12月18日火曜日

【謹告】ラベプラゾールナトリウムの用法・用量に関する特許権について

 12月17日の日刊薬業に「【謹告】ラベプラゾールナトリウムの用法・用量に関する特許権について」が掲載されました。
 「【謹告】ラベプラゾールナトリウムの用法・用量に関する特許権について」によると、エーザイ株式会社は、パリエット®錠5mg/10mgのプロトンポンプ阻害剤抵抗性逆流性食道炎(プロトンポンプ阻害剤の1日1回投与による従来の治療で効果不十分な逆流性食道炎)に対する維持療法に関する用法・用量(1回10mg 1日2回投与)について、特許6283440を保有しているそうです。



特許6283440の内容


 J-Plat-Patで確認したところ、特許6283440の主なクレームは以下のようなものでした。

"【請求項1】
  ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤を有効成分とし、維持療法を行う前の治療により治癒したプロトンポンプ阻害剤抵抗性逆流性食道炎患者に対する維持療法のために、プロトンポンプ阻害剤抵抗性ではない逆流性食道炎患者に対する治療期の常用量のベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤を1日2回、4週間以上投与され、
  前記プロトンポンプ阻害剤抵抗性ではない逆流性食道炎患者に対する治療期の常用量が10mgであり、
  前記ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤が、ラベプラゾール、ラベプラゾールのプロドラッグ、又はそれらの薬学上許容される塩若しくは溶媒和物であることを特徴とする、逆流性食道炎の再発抑制剤。"



パリエットパリエット®錠5mg/10mgの用法・用量


逆流性食道炎
<治療>
逆流性食道炎の治療においては、通常、成人にはラベプラゾールナトリウムとして 1 回10mgを 1 日 1 回経口投与するが、病状により 1 回20mgを 1 日 1 回経口投与することができる。なお、通常、 8 週間までの投与とする。また、プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な場合、 1 回10mg又は 1 回20mgを 1 日 2 回、さらに 8 週間経口投与することができる。ただし、 1 回20mg 1 日 2 回投与は重度の粘膜傷害を有する場合に限る。
<維持療法>
再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法においては、通常、成人にはラベプラゾールナトリウムとして 1 回10mgを 1 日 1 回経口投与する。また、プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な逆流性食道炎の維持療法においては、 1 回10mgを1 日 2 回経口投与することができる。

 今回の謹告で指摘されているのは、2016年10月に申請/2017年9月に承認された下線部分の用法・用量です。



特許6283440とパリエット®錠5mg/10mgとの関係


構成要件の分節
 まず特許6283440の請求項1を、構成要件ごとに分節してみます。

構成要件
Aベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤を有効成分とし、
B維持療法を行う前の治療により治癒したプロトンポンプ阻害剤抵抗性逆流性食道炎患者に対する維持療法のために、
Cプロトンポンプ阻害剤抵抗性ではない逆流性食道炎患者に対する治療期の常用量のベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤を1日2回、4週間以上投与され、
D前記プロトンポンプ阻害剤抵抗性ではない逆流性食道炎患者に対する治療期の常用量が10mgであり、
E前記ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤が、ラベプラゾール、ラベプラゾールのプロドラッグ、又はそれらの薬学上許容される塩若しくは溶媒和物であることを特徴とする、
F逆流性食道炎の再発抑制剤。


構成要件とパリエット®錠5mg/10mgの対比
 次に各構成要件とパリエットパリエット®錠5mg/10mgとを対比してみます。

構成要件A
 パリエット®錠5mg/10mgの有効成分ラベプラゾールは、ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤に該当するため、パリエット®錠5mg/10mgは構成要件Aを充足すると考えられます。

構成要件B
 パリエット®錠5mg/10mgに流性食道塩の維持療法の用法・用量が追加された時の審査報告書によると、プロトンポンプ阻害剤抵抗性逆流性食道炎の患者を被験者として、治療期には、10mgを1日2回又は20mgを1日2回、8週間投与し、維持療法期には、治療期で治癒が確認された被験者を対象とし、10mgを1日1回、52週間投与郡と1日2回、52週間投与郡とを比較する臨床試験が実施されています。
 この臨床試験の結果、10mg1日2回群の方が、10mg1日1回投与群に比べて再発率が低いことが示されたため、維持療法の用法・用量が承認されています。
 この臨床試験を考慮すると、パリエット®錠5mg/10mgは、いったん治癒したプロトンポンプ阻害剤抵抗性逆流性食道炎患者に対する維持療法で投与されることがあり、パリエット®錠5mg/10mgは構成要件Bを充足すると思われます。

構成要件C
 前述の臨床試験を考慮すると、パリエット®錠5mg/10mgは、10mg1日2回、4週間以上投与されることがあり、パリエット®錠5mg/10mgは構成要件Cを充足すると思われます。

構成要件D
 添付文書によると、逆流性食道炎の治療における用法・用量は、ラベプラゾールナトリウムとして 1 回10mgを 1 日 1 回経口投与であるため、パリエット®錠5mg/10mgは構成要件Dを充足すると考えられます。

構成要件E
 ラベプラゾールはナトリウム塩として配合されているため、パリエット®錠5mg/10mgは構成要件Eを充足すると考えられます。

構成要件F
 前述の臨床試験を考慮すると、パリエット®錠5mg/10mgの投与により、逆流性食道炎の再発が抑制されているため、パリエット®錠5mg/10mgは構成要件Fを充足すると思われます。

 以上より、特許6283440は、パリエット®錠5mg/10mgの逆流性食道塩の維持療法の用法・用量を保護していると思われます。



ジェネリックの状況

 
 PMDAのHPで検索した結果、以下のジェネリックがヒットし、いずれも謹告で指摘された流性食道塩の維持療法の用法・用量を取得していました。

販売名製造販売業者等
ラベプラゾールナトリウム錠10mg「NPI」製造販売元/日本薬品工業株式会社,販売提携/ジャパンフューチャー株式会社
ラベプラゾールナトリウム錠10mg「科研」発売元/ 科研製薬株式会社,製造販売元/ ダイト株式会社
ラベプラゾールナトリウム錠10mg「ケミファ」製造販売元/日本ケミファ株式会社
ラベプラゾールナトリウム錠10mg「ケミファ」販売元/日本薬品工業株式会社,製造販売元/日本ケミファ株式会社
ラベプラゾールナトリウム錠10mg「サンド」製造販売/サンド株式会社
ラベプラゾールナトリウム錠10mg「ゼリア」製造販売元/ゼリア新薬工業株式会社
ラベプラゾールナトリウム錠10mg「タイヨー」販売/武田薬品工業株式会社,発売元/武田テバファーマ株式会社,製造販売元/大興製薬株式会社
ラベプラゾールナトリウム錠10mg「日医工」製造販売元/日医工株式会社
ラベプラゾールナトリウム錠10mg「FFP」販売元/富士フイルムファーマ株式会社,製造販売元/シオノケミカル株式会社
ラベプラゾールナトリウム錠10mg「NP」製造販売/ニプロ株式会社
ラベプラゾールナトリウム錠10mg「TCK」製造販売元/辰巳化学株式会社
ラベプラゾールNa塩錠10mg「オーハラ」製造販売元/大原薬品工業株式会社
ラベプラゾールNa塩錠10mg「オーハラ」製造販売元/大原薬品工業株式会社,販売元/共創未来ファーマ株式会社
ラベプラゾールNa塩錠10mg「オーハラ」販売/株式会社 エッセンシャルファーマ,製造販売元/大原薬品工業株式会社
ラベプラゾールNa塩錠10mg「オーハラ」製造販売元/大原薬品工業株式会社,販売元/第一三共エスファ株式会社,販売提携/第一三共株式会社
ラベプラゾールNa塩錠10mg「明治」製造販売元/Meiji Seika ファルマ株式会社
ラベプラゾールNa錠10mg「アメル」製造販売元/共和薬品工業株式会社
ラベプラゾールNa錠10mg「杏林」販売元/杏林製薬株式会社,製造販売元/キョーリンリメディオ株式会社
ラベプラゾールNa錠10mg「サワイ」製造販売元/沢井製薬株式会社
ラベプラゾールNa錠10mg「トーワ」製造販売元/東和薬品株式会社
ラベプラゾールNa錠10mg「日新」製造販売元/日新製薬株式会社
ラベプラゾールNa錠10mg「ファイザー」製造販売/ファイザー株式会社,提携/マイラン製薬株式会社
ラベプラゾールNa錠10mg「AA」製造販売元/あすか製薬株式会社,販売/武田薬品工業株式会社
ラベプラゾールNa錠10mg「BMD」製造販売元/株式会社ビオメディクス
ラベプラゾールNa錠10mg「JG」製造販売元/日本ジェネリック株式会社
ラベプラゾールNa錠10mg「TYK」販売/武田薬品工業株式会社,発売元/武田テバファーマ株式会社,製造販売元/武田テバ薬品株式会社
ラベプラゾールNa錠10mg「YD」製造販売元/株式会社 陽進堂

 また、各ジェネリックは以下のような関係にありました。



























今後の展開

 
 各ジェネリックともパリエット®錠5mg/10mgと同様に逆流性食道塩の維持療法の用法・用量を取得しています。特許6283440は、パリエット®錠5mg/10mgの逆流性食道塩の維持療法の用法・用量を保護していると思われため、各ジェネリックと特許6283440の関連性が強く疑われます。
 今回、特許権者は謹告というアクションを起こしました。次は各ジェネリックに対し、警告や権利行使といったアクションを起こす可能性があります。反対にジェネリック側は、特許6283440に対する無効審判を請求する可能性も考えられます。
 今後の両者のアクションが注目されます。

2018年12月14日金曜日

2018年8月承認品目~ゲフィチニブ~

 今回は、2018年8月に承認されたゲフィチニブについて紹介したいと思います。


ゲフィチニブの製品情報


有効成分
一般名:ゲフィチニブ
効能・効果
EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌
剤形・規格
イレッサ錠250 (2002年8月薬価収載)
製造販売元
アストラゼネカ株式会社



基本特許


効能・効果再審査期間特許3040486
-物質
EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌2010/07/042018/08/24



オーソライズド・ジェネリック(AG)が承認された理由


 再審査期間が2010年7月4日に終了し、物質特許(特許3040486)が2018年8月24日に満了したため、通常のジェネリックは2018年2月申請~2019年2月承認と考えられます。
 一方、第一三共エスファのゲフィチニブ錠250mg「DSEP」は、AGであるため、通常のジェネリックよりも早い2018年8月に承認されたと考えられます。



ゲフィチニブとEGFR遺伝子変異検査


 ところで、イレッサ錠の“効能・効果に関連する使用上の注意”の欄には、“EGFR遺伝子変異検査を実施すること”と記載されています。また、ゲフィチニブの非小細胞肺癌患者への適応を判定するために用いられる診断薬として、コバス EGFR 変異検出キット(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)therascreen EGFR 変異検出キット RGQ 「キアゲン」(株式会社キアゲン)が承認されています。



EGFR遺伝子変異検査と特許


 そこで、EGFR遺伝子変異検査に使用される診断薬に関連する特許がないか調べてみたところ、特許4350148(満了日:2025/03/31)とそのファミリー(特許4468475、特許5449943、特許5688399、特開2015-023865、特開2017-074048)が見つかり、特許4350148の主なクレームを以下の通りでした。

”【請求項1】
  以下の工程を含む、非小細胞肺癌と診断された個体におけるゲフィチニブまたはエルロチニブによる治療の薬理有効性の可能性の増大を決定するための方法。
  個体の非小細胞肺癌腫瘍サンプルからDNAを得る工程;及び該DNA中の上皮細胞成長因子受容体(EGFR)遺伝子のエキソン19または21において、少なくとも1つのヌクレオチド相違の有無を検出する工程であって、
a)少なくとも配列番号:512の747位、748位および749位のアミノ酸ロイシン、アルギニン、及びグルタミン酸の欠損を含むアミノ酸変異をもたらす、コドン746~753内の欠損からなるEGFR遺伝子のエキソン19内のインフレーム欠損、
b)配列番号:512の858位におけるロイシンからアルギニンへの置換(L858R)からなるアミノ酸変異をもたらす、エキソン21内の置換、
から選択された少なくとも一つのヌクレオチド相違の存在は、個体におけるゲフィチニブまたはエルロチニブによる治療の薬理有効性の可能性が増大することを示す工程”

 EGFR遺伝子変異検査に使用される診断薬は、EGFR遺伝子のエクソン18,19,20 及び 21 中の特定の変異を検出することから、特許4350148とそのファミリーは、診断薬を保護していると推測されます。



EGFR遺伝子変異検査の特許とジェネリック


 特許4350148(満了日:2025/03/31)とそのファミリーの主なクレームは、“ゲフィチニブに対する応答性を決定する方法”でした。”方法”の特許であるためEGFR遺伝子変異検査に使用される診断薬は保護しているものの、イレッサ錠自体は保護しておらず、特許4350148とそのファミリーでジェネリックの参入を阻むことはできないと考えられます。
 ここで、一つ考えてみたい思います。もし特許4350148とそのファミリーが、以下の様なクレームを含んでいたら、結果はどうだったでしょうか?

“非小細胞肺癌患についてヒトを治療することに用いるための、ゲフィチニブ、またはその医薬的に許容可能な塩を含んでなる医薬組成物であって、前記医薬組成物は、前記ヒトが、以下の工程を含む方法によりEGFR遺伝子変異を有すると同定された後、前記ヒトに投与される、医薬組成物。
 個体の非小細胞肺癌腫瘍サンプルからDNAを得る工程;及び該DNA中の上皮細胞成長因子受容体(EGFR)遺伝子のエキソン19または21において、少なくとも1つのヌクレオチド相違の有無を検出する工程であって、
 a)少なくとも配列番号:512の747位、748位および749位のアミノ酸ロイシン、アルギニン、及びグルタミン酸の欠損を含むアミノ酸変異をもたらす、コドン746~753内の欠損からなるEGFR遺伝子のエキソン19内のインフレーム欠損、
 b)配列番号:512の858位におけるロイシンからアルギニンへの置換(L858R)からなるアミノ酸変異をもたらす、エキソン21内の置換、
から選択された少なくとも一つのヌクレオチド相違の存在は、個体におけるゲフィチニブまたはエルロチニブによる治療の薬理有効性の可能性が増大することを示す工程。”

 このクレームは、EGFR遺伝子変異を有すると同定された後に投与されることを特徴とする”医薬組成物”の特許ですから、イレッサ錠を保護することができ、2025年12月までジェネリックの参入を妨げることができます。イレッサ錠の市場規模は、100億前後ですので、もし製品のライフサイクルを7年間延ばすことができたなら、そのインパクトは大きかったのではないでしょうか。


 次回はシロドシンについて分析してみたいと思います。

2018年9月18日火曜日

2018年8月承認品目~カペシタビン~

 今回は、2018年8月に承認されたカペシタビンについて紹介したいと思います。


カペシタビンの製品情報


有効成分
一般名:カペシタビン
効能・効果
手術不能又は再発乳癌
結腸・直腸癌
胃癌
剤形・規格
ゼローダ錠300 (2003年6月薬価収載)
製造販売元
中外製薬株式会社



基本特許


 再審査期間が2011年4月15日に終了し、2018年12月16日に満了するはずだったカペシタビンの物質特許(特許2501297)も年金不能により抹消されてしまったため、いつでもジェネリックを出せる状況でしたが、実際に承認を取得したのは沢井製薬1社のみでした。

効能・効果再審査期間特許1951556
-物質
特許2501297
-物質
手術不能又は再発乳癌2011/04/152013/11/14
年金不納による
抹消
結腸・直腸癌2011/04/152013/11/14
胃癌2011/04/152008/11/14



沢井製薬1社だった理由


 特許を取得した後、特許を維持し続けるためには年金を支払う必要があります。そこで、カペシタビンの物質特許(特許2501297)の経過情報をJ-Plat-Patで確認してみたころ、平成26年までは特許を維持するための年金を納付されていましたが、平成27年は年金が納付されておらず、その後、年金の補充手続きがされましたが、平成29年1月に特許庁が年金の補充手続きを却下したため、平成27年3月13日付けで特許が消滅してしまっていました。

 カペシタビンの物質特許(特許2501297)があった場合、2018年2月申請~2019年2月承認を目標にジェネリックを開発するとなります。開発を前倒しするためには、まず①年金が納付されていないことに気がつくことが必要です(情報収能力)。特許庁が年金補充手続きを却下するのを待ってから開発を開始するのでは、2017年8月申請に間に合わないため、②法的判断をして、年金補充手続きが却下されることを、ある程度、予想することも必要です(法的判断能力)。さらに、③原料と調達、製剤の開発、保存試験・生物学的同等性試験等の各種試験を全て前倒しする必要があります(開発能力)
 沢井製薬は、①情報収能力、②法的判断能力、③開発能力の全てにおいて、他社を上回っていた結果、1社単独で承認を取得できたと言えます。


 次回はゲフィチニブについて分析してみたいと思います。

2018年9月3日月曜日

2018年8月承認品目~エレトリプタン臭化水素酸塩~

 今回は、2018年8月に承認されたエレトリプタンについて紹介したいと思います。


エレトリプタン臭化水素酸塩の製品情報


有効成分
一般名:エレトリプタン臭化水素酸塩
効能・効果
片頭痛
剤形・規格
レルパックス錠25mg (2002年6月薬価収載)
製造販売元
ファイザー株式会社



基本特許


再審査期間が2010年4月10日に終了、物質特許(特許2904588)が2018年6月29日に満了したため、2017年8月申請~2018年8月承認となったと考えられます。

効能・効果再審査期間特許2904588
-物質
片頭痛2010/04/102018/06/29



競合関係


レルパックスの後発医薬品として、8社8製品が承認されました。先発品と同じフィルムコーティング錠は、日医工、サンド、東和薬品、辰巳化学、日新製薬、陽進堂、第一三共エスファの7社7製品が承認され、先発品にはないOD錠として、共和薬品工業の1社1製品が承認されています。
 現在公開されている情報に基づき、各社の競合関係を分析したところ、以下のような結果が得られました。




サンド、東和薬品及び辰巳化学、日新製薬、陽進堂及び第一三共エスファが、それぞれ共同開発ですので、単独の日医工と共和薬品工業を含めると、実質的には4社4製品ということになります。
 OD錠を出してきたのが、東和薬品ではなく共和薬品工業だったというのが、少々、意外でした。共和薬品工業は中枢神経系用薬に強いというイメージがあるものの、エレトリプタンは中枢神経系のお薬ではないように思います。また、他のトリプタン系のジェネリックについて調べてみたところ、先発の剤形にOD錠がないのにジェネリックがOD錠を開発したという前例はありませんでした。

販売名
レルパックス錠20mg
エレトリプタン錠20mg「サンド」
エレトリプタン錠20mg「トーワ」
エレトリプタン錠20mg「日医工」
エレトリプタン錠20mg「日新」
エレトリプタン錠20mg「DSEP」
エレトリプタン錠20mg「TCK」
エレトリプタン錠20mg「YD」
エレトリプタンOD錠20mg「アメル」
イミグラン錠50
スマトリプタン錠50mg「アスペン」
スマトリプタン錠50mg「アメル」
スマトリプタン錠50mg「タカタ」/スマトリプタン内用液50mg「タカタ」
スマトリプタン錠50mg「トーワ」
スマトリプタン錠50mg「日医工」
スマトリプタン錠50mg「マイラン」
スマトリプタン錠50mg「DK」
スマトリプタン錠50mg「F」
スマトリプタン錠50mg「FFP」
スマトリプタン錠50mg「JG」
スマトリプタン錠50mg「SN」
スマトリプタン錠50mg「TCK」
スマトリプタン錠50mg「YD」
ゾーミッグRM錠2.5mg
ゾルミトリプタンOD錠2.5mg「アメル」
ゾルミトリプタンOD錠2.5mg「タカタ」
ゾルミトリプタンOD錠2.5mg「トーワ」
ゾルミトリプタンOD錠2.5mg「日医工」
ゾルミトリプタンOD錠2.5mg「日新」
ゾルミトリプタンOD錠2.5mg「ファイザー」
ゾルミトリプタンOD錠2.5mg「JG」
マクサルト錠10mg/マクサルトRPD錠10mg
リザトリプタンOD錠10mg「アメル」
リザトリプタンOD錠10mg「トーワ」
リザトリプタンOD錠10mg「ファイザー」
リザトリプタンOD錠10mg「TCK」



製品比較


各社の添加剤・サイズ・色を比較したところ、以下のような結果が得られました。

販売名添加剤錠剤サイズ
レルパックス錠20mg結晶セルロース
乳糖水和物
クロスカルメロースナトリウム
ステアリン酸マグネシウム
ヒプロメロース
酸化チタン
トリアセチン
黄色 5 号
6.3x3.0だいだい色
エレトリプタン錠20mg「日医工」結晶セルロース
乳糖水和物
クロスカルメロースナトリウム
ステアリン酸マグネシウム
ヒプロメロース
酸化チタン
トリアセチン
黄色 5 号アルミニウムレーキ
カルナウバロウ
6.3x3.2だいだい色
エレトリプタン錠20mg「サンド」
結晶セルロース
乳糖水和物
クロスカルメロースナトリウム
ステアリン酸マグネシウム
ヒプロメロース
酸化チタン
トリアセチン
黄色 5 号アルミニウムレーキ
カルナウバロウ
6.6x3.1
だいだい色
エレトリプタン錠20mg「トーワ」
エレトリプタン錠20mg「TCK」
エレトリプタン錠20mg「日新」
結晶セルロース
乳糖水和物
クロスカルメロースナトリウム
ステアリン酸マグネシウム
ヒプロメロース
酸化チタン
トリアセチン
黄色 5 号
カルナウバロウ
6.1x3.2
だいだい色
エレトリプタン錠20mg「YD」
エレトリプタン錠20mg「DSEP」
エレトリプタンOD錠20mg「アメル」クロスカルメロースナトリウム
スクラロース
黄色三二酸化鉄
D-マンニトール
D-マンニトール・カルメロー
ス・結晶セルロース・クロスポビドン混合物
香料
ステアリン酸マグネシウム
8.0x2.9淡黄色

 共和薬品工業のOD錠以外、各社とも先発と添加剤・サイズ・色がとてもよく似ています。ざっと調べた限り、先発品の製剤設計を保護する存続中の特許は見当たりませんでしたので、各社、先発と同じ添加剤を用いていることができたと推測されます。


 次回はカペシタビンについて分析してみたいと思います。

2018年8月29日水曜日

2018年8月承認品目~アトモキセチン塩酸塩~

 今回は、2018年8月に承認されたアトモキセチンについて紹介したいと思います。



アトモキセチン塩酸塩の製品情報


有効成分
一般名:アトモキセチン塩酸塩
効能・効果
注意欠陥/多動性障害(AD/HD)
剤形・規格
ストラテラ カプセル5mg/10mg/25mg (2009年3月薬価収載)
ストラテラ カプセル40mg (2012年5月薬価収載)
ストラテラ 内用液0.4%(2013年11月薬価収載)
製造販売元
日本イーライリリー株式会社



基本特許


日本で登録された物質特許は見当たらず再審査期間が2017年4月21日に終了したため、2017年8月申請~2018年8月承認となったと考えられます。

効能・効果再審査期間
注意欠陥/多動性障害(AD/HD)2017/04/21



競合関係


ストラテラ カプセル/内用液の後発医薬品として、7社30製品が承認されました。先発品と同じカプセル剤は、沢井製薬、日医工及びファイザーの3社12製品が承認され、内用液は、東和薬品及びニプロの2社2製品が承認されています。また、先発品にはない錠剤として、高田製薬、東和薬品、ジェイドルフ製薬(第一三共エスファ)及びニプロの4社16製品が承認されています。

 現在公開されている情報に基づき、各社の競合関係を分析したところ、以下のような結果が得られました。


 錠剤4社16製品中、3社が共同開発ですので、実質的には2社8製品、内用液2社2製品も共同開発ですので、実質的には1社1製品ということになります。一方、カプセル剤3社12製品は、40mgカプセルのみ、沢井製薬と日医工の共同開発ですので、実質的には3社11製品ということになります。



製品比較


各社の添加剤・サイズ・色を比較したところ、以下のような結果が得られました。


販売名添加剤カプセルサイズ
ストラテラ カプセル5mg
部分アルファー化デンプン
ジメチルポリシロキサン
3橙色
ストラテラ カプセル10mg3白色
ストラテラ カプセル25mg3青色/白色
ストラテラ カプセル40mg3青色
アトモキセチンカプセル5mg「サワイ」
部分アルファー化デンプン
ジメチルポリシロキサン
5橙色
アトモキセチンカプセル10mg「サワイ」5白色
アトモキセチンカプセル25mg「サワイ」5青色/白色
アトモキセチンカプセル40mg「サワイ」3青色
アトモキセチンカプセル25mg「サワイ」
部分アルファー化デンプン
ジメチルポリシロキサン
3橙色
アトモキセチンカプセル5mg「日医工」3白色
アトモキセチンカプセル10mg「日医工」3青色/白色
アトモキセチンカセル25mg「日医工」3青色
アトモキセチンカプセル5mg「ファイザー」
結晶セルロース
部分アルファー化デンプン
軽質無水ケイ酸
ステアリン酸マグネシウム
5橙色
アトモキセチンカプセル10mg「ファイザー」3白色
アトモキセチンカプセル25mg「ファイザー」3青色/白色
アトモキセチンカプセル40mg「ファイザー」3青色


販売名添加剤錠剤サイズ
アトモキセチン錠5mg「タカタ」
D-マンニトール
結晶セルロース
軽質無水ケイ酸
デンプングリコール酸ナトリウム
グリセリン脂肪酸エステル
ステアリン酸マグネシウム
ヒプロメロース
酸化チタン
タルク
カルナウバロウ
黄色三二酸化鉄(10mg)
三二酸化鉄(25mg)
5.6x3淡黄色
アトモキセチン錠10mg「タカタ」7x3.6白色
アトモキセチン錠25mg「タカタ」8x3.7ごくうすい赤色
アトモキセチン錠40mg「タカタ」12.7x6x4.5 (楕円)白色
アトモキセチン錠5mg「DSEP」
部分アルファー化デンプン
軽質無水ケイ酸
ステアリン酸マグネシウム
ヒプロメロース
酸化チタン
ヒドロキシプロピルセルロース
タルク
その他2成分
5.1x2.8
白色
アトモキセチン錠5mg「トーワ」
アトモキセチン錠5mg「ニプロ」
アトモキセチン錠10mg「DSEP」
6.6x3.3
アトモキセチン錠10mg「トーワ」
アトモキセチン錠10mg「ニプロ」
アトモキセチン錠25mg「DSEP」
7.6x3.1
アトモキセチン錠25mg「トーワ」
アトモキセチン錠25mg「ニプロ」
アトモキセチン錠40mg「DSEP」
8.6x3.7
アトモキセチン錠40mg「トーワ」
アトモキセチン錠40mg「ニプロ」


販売名添加剤フレーバー使用期限
ストラテラ内用液0.4%安息香酸ナトリウム
リン酸二水素ナトリウム
リン酸
D-ソルビトール液
キシリトール
香料
エチルバニリン
バニリン
プロピレングリコール
スクラロース
水酸化ナトリウム
ラズベリー2年
アトモキセチン内用液0.4%「トーワ」
安息香酸ナトリウム
リン酸二水素ナトリウム
リン酸
D‐ソルビトール液
キシリトール
香料
プロピレングリコール
スクラロース
水酸化ナトリウム
グレープ
3年
アトモキセチン内用液0.4%「ニプロ」

 先発にない剤形の錠剤では、錠剤化することで差別化を図り、加えて、それぞれ添加剤・形・サイズ・色に特色が見られます。先発と同じカプセル剤では、先発と添加剤・サイズ・色を合わせた日医工、先発よりも小型化を図った沢井、先発と異なる添加剤を使用したファイザー(Mylan)とそれぞれ特色が認められます。内用液では、製剤特許(5973073)が登録されているため、先発とフレーバーが異なるものの、使用されている添加剤は似ており、先発の使用期限が2年であるのに対し、ジェネリックの使用期限は3年に延びているという特徴があります。
 それぞれに特色があるため、どの製剤が市場で受け入れられるのかが注目です。

 次回は、エレトリプタンについて、分析したいと思います。