ナルフラフィンの基本特許
基本特許は以下の通りです。
「血液透析患者におけるそう痒症」について、再審査期間が2017年1月20日に終了し、ナルフラフィンの物質特許(特許2525552)が2018年1月22日満了するため、2017年2月申請~2018年2月承認となったと考えられます。
「慢性肝疾患患者におけるそう痒症」については、用途特許(特許3531170)が2022年11月21日まで延長され、「腹膜透析患者におけるそう痒症」については、延長期間は不明ですが、用途特許(特許3531170)の延長登録出願がされているため、2月の承認時点のジェネリック医薬品の効能・効果は、「血液透析患者におけるそう痒症」のみとなりました。
各社の競合関係
2月26日時点で公開されている製品情報に基づき、承認された11社の競合関係を分析した結果は以下の通りでした。
2月22日時点で製品情報が公開されていないビオメディックス、日新製薬及び沢井製薬については、競合関係を分析することはできませんでした。しかし、承認番号の並びから以下のような競合関係にあると推測されます(※製品情報の公開後、更新予定)。
先発品のOD錠(レミッチOD錠)が2017年6月に発売されています。沢井製薬/扶桑薬品のOD錠やニプロのODフィルムが、先発品の剤形追加に対応している点が特徴的です。
注目製品
ナルフラフィンの中で特許の観点から注目したいのが、沢井製薬/扶桑薬品のOD錠とニプロのODフィルムです。 理由は、2018年2月承認予想~注目品目:ナルフラフィン~ で述べた通り、“延長された特許権の効力範囲”という論点があるからです。
今後の展開
特許権者の立場としては、OD錠の承認に基づく延長登録出願をしているからには、沢井製薬/扶桑薬品のOD錠とニプロのODフィルムは延長された特許権の効力が及ぶとして権利行使できないかを考えてくるでしょう。
今後、以下の点が注目されます。
- 沢井のOD錠とニプロのフィルムは6月に薬価収載されるか?
- 沢井のOD錠とニプロのフィルムが6月に薬価収載された場合、係争に発展するか?
- 係争に発展した場合、延長された特許権の効力について、どういった判断がされるか?
もし係争に発展した場合、延長された特許権の効力に関する重要な判例となるはずです。今後の展開に注目していきたいと思います。
2021/1/6に一部のナルフラフィンGEが慢性肝疾患の掻痒症に対する適応を拡大しました。本サイトでは、レミッチが有している「慢性肝疾患患者におけるそう痒症」については、用途特許(特許3531170)が2022年11月21日まで延長されているとの記述がありますが、どう解釈すべきでしょうか?
返信削除コメント、ありがとうございます。
削除用途特許(特許3531170)の延長については、沢井製薬が延長登録無効審判(無効2020-800002号・無効2020-800003号・無効2020-800004号)を請求し、昨年の7月に延長登録を無効とする審決がされました。この審決がされたため、一部のGEで適応拡大が承認されたと考えられます。
なお、特許庁の審決の取消を求めた審決取消訴訟が知的財産高等裁判所に係属中で、昨年、12月に中間判決(参加人ニプロの被告適格の判断)がされたところです。
gemedicines様
返信削除早速のご回答、ありがとうございました。私はレミッチの販促に関わっている仕事をしており、本審決による適応拡大は鳩が豆鉄砲を食ったような感覚を味わいました。なお、コメントで記載いただいた審決取消訴訟の結果によっては、一部GEでの慢性肝疾患の掻痒症の適応拡大が取り消されることはあるのでしょうか?
コメント、ありがとうございます。
削除適応拡大が取消されたという事例を把握していませんので、はっきりしたことは分からないのですが、審決取消訴訟で延長登録は無効という判断が取消されたとしても、すぐに適応拡大が取消されるということはないのでは?という印象を持っています。