2018年9月18日火曜日

2018年8月承認品目~カペシタビン~

 今回は、2018年8月に承認されたカペシタビンについて紹介したいと思います。


カペシタビンの製品情報


有効成分
一般名:カペシタビン
効能・効果
手術不能又は再発乳癌
結腸・直腸癌
胃癌
剤形・規格
ゼローダ錠300 (2003年6月薬価収載)
製造販売元
中外製薬株式会社



基本特許


 再審査期間が2011年4月15日に終了し、2018年12月16日に満了するはずだったカペシタビンの物質特許(特許2501297)も年金不能により抹消されてしまったため、いつでもジェネリックを出せる状況でしたが、実際に承認を取得したのは沢井製薬1社のみでした。

効能・効果再審査期間特許1951556
-物質
特許2501297
-物質
手術不能又は再発乳癌2011/04/152013/11/14
年金不納による
抹消
結腸・直腸癌2011/04/152013/11/14
胃癌2011/04/152008/11/14



沢井製薬1社だった理由


 特許を取得した後、特許を維持し続けるためには年金を支払う必要があります。そこで、カペシタビンの物質特許(特許2501297)の経過情報をJ-Plat-Patで確認してみたころ、平成26年までは特許を維持するための年金を納付されていましたが、平成27年は年金が納付されておらず、その後、年金の補充手続きがされましたが、平成29年1月に特許庁が年金の補充手続きを却下したため、平成27年3月13日付けで特許が消滅してしまっていました。

 カペシタビンの物質特許(特許2501297)があった場合、2018年2月申請~2019年2月承認を目標にジェネリックを開発するとなります。開発を前倒しするためには、まず①年金が納付されていないことに気がつくことが必要です(情報収能力)。特許庁が年金補充手続きを却下するのを待ってから開発を開始するのでは、2017年8月申請に間に合わないため、②法的判断をして、年金補充手続きが却下されることを、ある程度、予想することも必要です(法的判断能力)。さらに、③原料と調達、製剤の開発、保存試験・生物学的同等性試験等の各種試験を全て前倒しする必要があります(開発能力)
 沢井製薬は、①情報収能力、②法的判断能力、③開発能力の全てにおいて、他社を上回っていた結果、1社単独で承認を取得できたと言えます。


 次回はゲフィチニブについて分析してみたいと思います。

2018年9月3日月曜日

2018年8月承認品目~エレトリプタン臭化水素酸塩~

 今回は、2018年8月に承認されたエレトリプタンについて紹介したいと思います。


エレトリプタン臭化水素酸塩の製品情報


有効成分
一般名:エレトリプタン臭化水素酸塩
効能・効果
片頭痛
剤形・規格
レルパックス錠25mg (2002年6月薬価収載)
製造販売元
ファイザー株式会社



基本特許


再審査期間が2010年4月10日に終了、物質特許(特許2904588)が2018年6月29日に満了したため、2017年8月申請~2018年8月承認となったと考えられます。

効能・効果再審査期間特許2904588
-物質
片頭痛2010/04/102018/06/29



競合関係


レルパックスの後発医薬品として、8社8製品が承認されました。先発品と同じフィルムコーティング錠は、日医工、サンド、東和薬品、辰巳化学、日新製薬、陽進堂、第一三共エスファの7社7製品が承認され、先発品にはないOD錠として、共和薬品工業の1社1製品が承認されています。
 現在公開されている情報に基づき、各社の競合関係を分析したところ、以下のような結果が得られました。




サンド、東和薬品及び辰巳化学、日新製薬、陽進堂及び第一三共エスファが、それぞれ共同開発ですので、単独の日医工と共和薬品工業を含めると、実質的には4社4製品ということになります。
 OD錠を出してきたのが、東和薬品ではなく共和薬品工業だったというのが、少々、意外でした。共和薬品工業は中枢神経系用薬に強いというイメージがあるものの、エレトリプタンは中枢神経系のお薬ではないように思います。また、他のトリプタン系のジェネリックについて調べてみたところ、先発の剤形にOD錠がないのにジェネリックがOD錠を開発したという前例はありませんでした。

販売名
レルパックス錠20mg
エレトリプタン錠20mg「サンド」
エレトリプタン錠20mg「トーワ」
エレトリプタン錠20mg「日医工」
エレトリプタン錠20mg「日新」
エレトリプタン錠20mg「DSEP」
エレトリプタン錠20mg「TCK」
エレトリプタン錠20mg「YD」
エレトリプタンOD錠20mg「アメル」
イミグラン錠50
スマトリプタン錠50mg「アスペン」
スマトリプタン錠50mg「アメル」
スマトリプタン錠50mg「タカタ」/スマトリプタン内用液50mg「タカタ」
スマトリプタン錠50mg「トーワ」
スマトリプタン錠50mg「日医工」
スマトリプタン錠50mg「マイラン」
スマトリプタン錠50mg「DK」
スマトリプタン錠50mg「F」
スマトリプタン錠50mg「FFP」
スマトリプタン錠50mg「JG」
スマトリプタン錠50mg「SN」
スマトリプタン錠50mg「TCK」
スマトリプタン錠50mg「YD」
ゾーミッグRM錠2.5mg
ゾルミトリプタンOD錠2.5mg「アメル」
ゾルミトリプタンOD錠2.5mg「タカタ」
ゾルミトリプタンOD錠2.5mg「トーワ」
ゾルミトリプタンOD錠2.5mg「日医工」
ゾルミトリプタンOD錠2.5mg「日新」
ゾルミトリプタンOD錠2.5mg「ファイザー」
ゾルミトリプタンOD錠2.5mg「JG」
マクサルト錠10mg/マクサルトRPD錠10mg
リザトリプタンOD錠10mg「アメル」
リザトリプタンOD錠10mg「トーワ」
リザトリプタンOD錠10mg「ファイザー」
リザトリプタンOD錠10mg「TCK」



製品比較


各社の添加剤・サイズ・色を比較したところ、以下のような結果が得られました。

販売名添加剤錠剤サイズ
レルパックス錠20mg結晶セルロース
乳糖水和物
クロスカルメロースナトリウム
ステアリン酸マグネシウム
ヒプロメロース
酸化チタン
トリアセチン
黄色 5 号
6.3x3.0だいだい色
エレトリプタン錠20mg「日医工」結晶セルロース
乳糖水和物
クロスカルメロースナトリウム
ステアリン酸マグネシウム
ヒプロメロース
酸化チタン
トリアセチン
黄色 5 号アルミニウムレーキ
カルナウバロウ
6.3x3.2だいだい色
エレトリプタン錠20mg「サンド」
結晶セルロース
乳糖水和物
クロスカルメロースナトリウム
ステアリン酸マグネシウム
ヒプロメロース
酸化チタン
トリアセチン
黄色 5 号アルミニウムレーキ
カルナウバロウ
6.6x3.1
だいだい色
エレトリプタン錠20mg「トーワ」
エレトリプタン錠20mg「TCK」
エレトリプタン錠20mg「日新」
結晶セルロース
乳糖水和物
クロスカルメロースナトリウム
ステアリン酸マグネシウム
ヒプロメロース
酸化チタン
トリアセチン
黄色 5 号
カルナウバロウ
6.1x3.2
だいだい色
エレトリプタン錠20mg「YD」
エレトリプタン錠20mg「DSEP」
エレトリプタンOD錠20mg「アメル」クロスカルメロースナトリウム
スクラロース
黄色三二酸化鉄
D-マンニトール
D-マンニトール・カルメロー
ス・結晶セルロース・クロスポビドン混合物
香料
ステアリン酸マグネシウム
8.0x2.9淡黄色

 共和薬品工業のOD錠以外、各社とも先発と添加剤・サイズ・色がとてもよく似ています。ざっと調べた限り、先発品の製剤設計を保護する存続中の特許は見当たりませんでしたので、各社、先発と同じ添加剤を用いていることができたと推測されます。


 次回はカペシタビンについて分析してみたいと思います。