「【謹告】ラベプラゾールナトリウムの用法・用量に関する特許権について」によると、エーザイ株式会社は、パリエット®錠5mg/10mgのプロトンポンプ阻害剤抵抗性逆流性食道炎(プロトンポンプ阻害剤の1日1回投与による従来の治療で効果不十分な逆流性食道炎)に対する維持療法に関する用法・用量(1回10mg 1日2回投与)について、特許6283440を保有しているそうです。
特許6283440の内容
J-Plat-Patで確認したところ、特許6283440の主なクレームは以下のようなものでした。
"【請求項1】
ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤を有効成分とし、維持療法を行う前の治療により治癒したプロトンポンプ阻害剤抵抗性逆流性食道炎患者に対する維持療法のために、プロトンポンプ阻害剤抵抗性ではない逆流性食道炎患者に対する治療期の常用量のベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤を1日2回、4週間以上投与され、
前記プロトンポンプ阻害剤抵抗性ではない逆流性食道炎患者に対する治療期の常用量が10mgであり、
前記ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤が、ラベプラゾール、ラベプラゾールのプロドラッグ、又はそれらの薬学上許容される塩若しくは溶媒和物であることを特徴とする、逆流性食道炎の再発抑制剤。"
パリエットパリエット®錠5mg/10mgの用法・用量
逆流性食道炎
<治療>
逆流性食道炎の治療においては、通常、成人にはラベプラゾールナトリウムとして 1 回10mgを 1 日 1 回経口投与するが、病状により 1 回20mgを 1 日 1 回経口投与することができる。なお、通常、 8 週間までの投与とする。また、プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な場合、 1 回10mg又は 1 回20mgを 1 日 2 回、さらに 8 週間経口投与することができる。ただし、 1 回20mg 1 日 2 回投与は重度の粘膜傷害を有する場合に限る。
<維持療法>
再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法においては、通常、成人にはラベプラゾールナトリウムとして 1 回10mgを 1 日 1 回経口投与する。また、プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な逆流性食道炎の維持療法においては、 1 回10mgを1 日 2 回経口投与することができる。
今回の謹告で指摘されているのは、2016年10月に申請/2017年9月に承認された下線部分の用法・用量です。
特許6283440とパリエット®錠5mg/10mgとの関係
構成要件の分節
まず特許6283440の請求項1を、構成要件ごとに分節してみます。
構成要件とパリエット®錠5mg/10mgの対比
次に各構成要件とパリエットパリエット®錠5mg/10mgとを対比してみます。
構成要件A
パリエット®錠5mg/10mgの有効成分ラベプラゾールは、ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤に該当するため、パリエット®錠5mg/10mgは構成要件Aを充足すると考えられます。
構成要件B
パリエット®錠5mg/10mgに流性食道塩の維持療法の用法・用量が追加された時の審査報告書によると、プロトンポンプ阻害剤抵抗性逆流性食道炎の患者を被験者として、治療期には、10mgを1日2回又は20mgを1日2回、8週間投与し、維持療法期には、治療期で治癒が確認された被験者を対象とし、10mgを1日1回、52週間投与郡と1日2回、52週間投与郡とを比較する臨床試験が実施されています。
この臨床試験の結果、10mg1日2回群の方が、10mg1日1回投与群に比べて再発率が低いことが示されたため、維持療法の用法・用量が承認されています。
この臨床試験を考慮すると、パリエット®錠5mg/10mgは、いったん治癒したプロトンポンプ阻害剤抵抗性逆流性食道炎患者に対する維持療法で投与されることがあり、パリエット®錠5mg/10mgは構成要件Bを充足すると思われます。
構成要件C
前述の臨床試験を考慮すると、パリエット®錠5mg/10mgは、10mg1日2回、4週間以上投与されることがあり、パリエット®錠5mg/10mgは構成要件Cを充足すると思われます。
構成要件D
添付文書によると、逆流性食道炎の治療における用法・用量は、ラベプラゾールナトリウムとして 1 回10mgを 1 日 1 回経口投与であるため、パリエット®錠5mg/10mgは構成要件Dを充足すると考えられます。
構成要件E
ラベプラゾールはナトリウム塩として配合されているため、パリエット®錠5mg/10mgは構成要件Eを充足すると考えられます。
構成要件F
前述の臨床試験を考慮すると、パリエット®錠5mg/10mgの投与により、逆流性食道炎の再発が抑制されているため、パリエット®錠5mg/10mgは構成要件Fを充足すると思われます。
以上より、特許6283440は、パリエット®錠5mg/10mgの逆流性食道塩の維持療法の用法・用量を保護していると思われます。
ジェネリックの状況
PMDAのHPで検索した結果、以下のジェネリックがヒットし、いずれも謹告で指摘された流性食道塩の維持療法の用法・用量を取得していました。
また、各ジェネリックは以下のような関係にありました。
今後の展開
各ジェネリックともパリエット®錠5mg/10mgと同様に逆流性食道塩の維持療法の用法・用量を取得しています。特許6283440は、パリエット®錠5mg/10mgの逆流性食道塩の維持療法の用法・用量を保護していると思われため、各ジェネリックと特許6283440の関連性が強く疑われます。
今回、特許権者は謹告というアクションを起こしました。次は各ジェネリックに対し、警告や権利行使といったアクションを起こす可能性があります。反対にジェネリック側は、特許6283440に対する無効審判を請求する可能性も考えられます。
今後の両者のアクションが注目されます。