ゲフィチニブの製品情報
有効成分
一般名:ゲフィチニブ
効能・効果
EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌
剤形・規格
イレッサ錠250 (2002年8月薬価収載)
製造販売元
アストラゼネカ株式会社
基本特許
オーソライズド・ジェネリック(AG)が承認された理由
再審査期間が2010年7月4日に終了し、物質特許(特許3040486)が2018年8月24日に満了したため、通常のジェネリックは2018年2月申請~2019年2月承認と考えられます。
一方、第一三共エスファのゲフィチニブ錠250mg「DSEP」は、AGであるため、通常のジェネリックよりも早い2018年8月に承認されたと考えられます。
ゲフィチニブとEGFR遺伝子変異検査
ところで、イレッサ錠の“効能・効果に関連する使用上の注意”の欄には、“EGFR遺伝子変異検査を実施すること”と記載されています。また、ゲフィチニブの非小細胞肺癌患者への適応を判定するために用いられる診断薬として、コバス EGFR 変異検出キット(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)とtherascreen EGFR 変異検出キット RGQ 「キアゲン」(株式会社キアゲン)が承認されています。
EGFR遺伝子変異検査と特許
そこで、EGFR遺伝子変異検査に使用される診断薬に関連する特許がないか調べてみたところ、特許4350148(満了日:2025/03/31)とそのファミリー(特許4468475、特許5449943、特許5688399、特開2015-023865、特開2017-074048)が見つかり、特許4350148の主なクレームを以下の通りでした。
”【請求項1】
以下の工程を含む、非小細胞肺癌と診断された個体におけるゲフィチニブまたはエルロチニブによる治療の薬理有効性の可能性の増大を決定するための方法。
個体の非小細胞肺癌腫瘍サンプルからDNAを得る工程;及び該DNA中の上皮細胞成長因子受容体(EGFR)遺伝子のエキソン19または21において、少なくとも1つのヌクレオチド相違の有無を検出する工程であって、
a)少なくとも配列番号:512の747位、748位および749位のアミノ酸ロイシン、アルギニン、及びグルタミン酸の欠損を含むアミノ酸変異をもたらす、コドン746~753内の欠損からなるEGFR遺伝子のエキソン19内のインフレーム欠損、
b)配列番号:512の858位におけるロイシンからアルギニンへの置換(L858R)からなるアミノ酸変異をもたらす、エキソン21内の置換、
から選択された少なくとも一つのヌクレオチド相違の存在は、個体におけるゲフィチニブまたはエルロチニブによる治療の薬理有効性の可能性が増大することを示す工程”
EGFR遺伝子変異検査に使用される診断薬は、EGFR遺伝子のエクソン18,19,20 及び 21 中の特定の変異を検出することから、特許4350148とそのファミリーは、診断薬を保護していると推測されます。
EGFR遺伝子変異検査の特許とジェネリック
特許4350148(満了日:2025/03/31)とそのファミリーの主なクレームは、“ゲフィチニブに対する応答性を決定する方法”でした。”方法”の特許であるため、EGFR遺伝子変異検査に使用される診断薬は保護しているものの、イレッサ錠自体は保護しておらず、特許4350148とそのファミリーでジェネリックの参入を阻むことはできないと考えられます。
ここで、一つ考えてみたい思います。もし特許4350148とそのファミリーが、以下の様なクレームを含んでいたら、結果はどうだったでしょうか?
“非小細胞肺癌患についてヒトを治療することに用いるための、ゲフィチニブ、またはその医薬的に許容可能な塩を含んでなる医薬組成物であって、前記医薬組成物は、前記ヒトが、以下の工程を含む方法によりEGFR遺伝子変異を有すると同定された後、前記ヒトに投与される、医薬組成物。
個体の非小細胞肺癌腫瘍サンプルからDNAを得る工程;及び該DNA中の上皮細胞成長因子受容体(EGFR)遺伝子のエキソン19または21において、少なくとも1つのヌクレオチド相違の有無を検出する工程であって、
a)少なくとも配列番号:512の747位、748位および749位のアミノ酸ロイシン、アルギニン、及びグルタミン酸の欠損を含むアミノ酸変異をもたらす、コドン746~753内の欠損からなるEGFR遺伝子のエキソン19内のインフレーム欠損、
b)配列番号:512の858位におけるロイシンからアルギニンへの置換(L858R)からなるアミノ酸変異をもたらす、エキソン21内の置換、
から選択された少なくとも一つのヌクレオチド相違の存在は、個体におけるゲフィチニブまたはエルロチニブによる治療の薬理有効性の可能性が増大することを示す工程。”
このクレームは、EGFR遺伝子変異を有すると同定された後に投与されることを特徴とする”医薬組成物”の特許ですから、イレッサ錠を保護することができ、2025年12月までジェネリックの参入を妨げることができます。イレッサ錠の市場規模は、100億前後ですので、もし製品のライフサイクルを7年間延ばすことができたなら、そのインパクトは大きかったのではないでしょうか。
次回はシロドシンについて分析してみたいと思います。
このコメントはブログの管理者によって削除されました。
返信削除