エルデカルシトールの製品情報
有効成分
一般名:エルデカルシトール
効能・効果
骨粗鬆症
剤形・規格
エディロール®カプセル0.5μg(2011年3月薬価収載)
エディロール®カプセル0.75μg(2011年3月薬価収載)
製造販売業者等
製造販売元/中外製薬株式会社
発売/大正製薬株式会社
エルデカルシトールの基本特許
物質特許(特許1894284)は、2005年に満了しており、再審査期間が2019年1月に終了しため、2019年2月申請~2020年2月承認となったと考えられます。
沢井製薬と日医工の関係
今回、承認されたのは、沢井製薬のエルデカルシトールカプセル0.5μg「サワイ」/エルデカルシトールカプセル0.75μg「サワイ」と日医工のエルデカルシトールカプセ0.5μg「日医工」/エルデカルシトールカプセル0.75μg「日医工」の4製品ですが、添付文書に記載された生物学的同等性試験の結果を比較すると、沢井製薬の製品と日医工の製品とで試験結果か共通しており、沢井製薬と日医工は共同開発の関係にあると考えられます。
また、J-Plat-Patを用いてエルデカルシトールに関する特許出願を検索したところ、沢井製薬の特開2019-006681と日医工の特許6628927が見つかりました。
これら二つの内容を確認したところ、沢井製薬の特開2019-006681は、エルデカルシトールを含む固形製剤に関する特許出願であるのに対し、日医工の特許6628927は、エルデカルシトールを含む軟カプセル剤に関する特許でした。
更に、日医工の特許6628927に記載された軟カプセルに使用されている添加剤と、承認された製品で使用されている添加剤を比較すると、色素を除き、多くの点で類似しています。
このことから、日医工が共同開発の主体であったと推測されます。
特許5969161は、以下のような内容で、エルデカルシトールの非外傷性前腕部骨折抑制効果をクレームしています。
【請求項1】
エルデカルシトールを含んでなる非外傷性である前腕部骨折を抑制するための医薬組成物。
【請求項2】
投与される対象が原発性骨粗鬆症患者である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
投与される対象が、若年者平均骨密度(YAM)の80%より低いか、またはTスコアがYAM値に対して-1SD以下である大腿部骨密度を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
エルデカルシトールが0.75μg/日の用量で経口投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
特許5969161とエディロール®カプセルの関係
エディロール®カプセルの効能・効果は、「骨粗鬆症」ですので、「非外傷性前腕部骨折」とは関係がないようにも見えます。
しかし、エディロール®カプセルのインタビューフォーム「開発の経緯」には、“非椎体骨折(3部位:大腿骨近位部、上腕骨、前腕骨)の発生頻度を低下させた”と記載され、「製品の治療学的特性」には、“前腕骨骨折を有意に抑制した。(第Ⅲ相試験)”と記載されています。
また、エディロール®カプセルの添付文書「臨床成績」には、“3年間の非外傷性前腕骨骨折発生頻度は、エルデカルシトール群で1.1%、アルファカルシドール群で3.6%であり(相対リスク減少率71%)、有意差が認められた”と記載されています。
これらの記載を考慮すると、エディロール®カプセルには非外傷性の前腕部骨折を抑制する作用があると考えられますので、特許5969161は、エディロール®カプセルを部分的に保護している可能性があります。
注目ポイント
一つ目の注目ポイントは、特許5969161の特許権者(中外製薬/大正製薬)は、沢井製薬と日医工に対し、どういったアクションを取るのか(侵害訴訟を提起)?という点です。
エルデカルシトール カプセル0.5μg「サワイ」とエルデカルシトール カプセル0.5μg「日医工」の添付文書には、「前腕部骨折」に関する記載はありません。しかし、同じ有効成分を含む以上、エルデカルシトール カプセル0.5μg「サワイ」とエルデカルシトール カプセル0.5μg「日医工」にも同様に非外傷性の前腕部骨折を抑制する作用はあると思われます。もし侵害訴訟が提起されれば、とても興味深い論点になりそうです。
二つ目の注目ポイントは、特許5969161に対する無効審判の行方(有効 or 無効)です。
沢井製薬と日医工は、2019年12月に特許5969161に対する無効審判を請求していますので、この無効審判で、特許庁がどのような判断をするのかにも注目です。
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