アログリプチン(ネシーナ®)
製品情報
有効成分一般名:アログリプチン安息香酸塩
剤形・規格
ネシーナ®錠25mg(2010年6月薬価収載)
ネシーナ®錠12.5mg(2010年6月薬価収載)
ネシーナ®錠6.25mg(2010年6月薬価収載)
製造販売元
製造販売/武田薬品工業株式会社
効能・効果の変遷
アログリプチン(ネシーナ®錠)は、2010年4月の最初の承認から3回の効能追加を経て、現在の効能・効果「2型糖尿病」となっています。
基本特許と延長登録
アログリプチンの基本特許として、アログリプチンの物質特許(特許3895349)が登録されていますが、この物質特許は、最初の承認とその後の3回の効能追加の承認のそれぞれについて、計4回の存続期間の延長が登録されています。
ジェネリック参入時期
現在のアログリプチン(ネシーナ®錠)の効能・効果は、「2型糖尿病」一つですが、効能・効果の追加毎に物質特許(特許3895349)の存続期間が延長されているため、「2型糖尿病」という一つの効能・効果の中で、単剤で投与する場合/併用する薬剤の種類によって満了日が異なるという現象が生じています。
それでは、いつ、どのような効能・効果でアログリプチン(ネシーナ®錠)のジェネリックが承認されるのでしょうか?
アログリプチン(ネシーナ®錠)のジェネリックの場合、「2型糖尿病」という一つの効能・効果の中で、いわゆる“虫食い”が認めれるか否かによって、2028年8月承認・12月薬価収載(ケース1)と2030年2月承認・6月薬価収載(ケース2)という二つのケースが考えられます。
ケース1は、「2型糖尿病」という一つの効能・効果の中で、いわゆる“虫食い”が認めれる場合です。
これは、物質特許(特許3895349)の2回目の延長期間が満了した後、「2型糖尿病(ただし、以下のいずれかの治療で十分な効果が得られない場合に限る;①食事療法、運動療法のみ、②食事療法、運動療法に加えてα−グルコシダーゼ阻害剤を使用、③食事療法、運動療法に加えてチアゾリジン系薬剤を使用」といった一部の効能・効果で2028年8月に承認され、3回目の延長期間が満了する2029年2月に、「④食事療法、運動療法に加えてスルホニルウレア系薬剤を使用と⑤食事療法、運動療法に加えてビグアナイド系薬剤を使用」の効能・効果を追加、4回目の延長期間が満了する2029年12月に先発と同じ「2型糖尿病」となるというケースです。
ケース2は、「2型糖尿病」という一つの効能・効果の中で、いわゆる“虫食い”が認めれない場合です。
これは、物質特許(特許3895349)の4回目の延長期間が満了し、先発と同じ「2型糖尿病」という効能・効果になるまでジェネリックが承認されず、2030年2月になって初めてジェネリックが承認されるというケースです。
ビルダグリプチン(エクア®)
製品情報
有効成分一般名:ビルダグリプチン
剤形・規格
エクア®錠50mg(2010年4月薬価収載)
製造販売元
製造販売/ノバルティス ファーマ株式会社
販売/大日本住友製薬株式会社
効能・効果の変遷
ビルダグリプチン(エクア®錠)は、2010年1月の最初の承認から2013年2月の効能追加を経て、現在の効能・効果「2型糖尿病」となっています。
基本特許と延長登録
ビルダグリプチンの基本特許として、ビルダグリプチンの物質特許(特許3681110)が登録されていますが、この物質特許は、最初の承認とその後の効能追加の承認のそれぞれについて、計2回の存続期間の延長が登録されています。
ジェネリック参入時期
アログリプチン(ネシーナ®錠)と同様に、ビルダグリプチン(エクア®錠)でも、効能・効果の追加毎に物質特許(特許3681110)の存続期間が延長されているため、「2型糖尿病」という一つの効能・効果の中で、単剤で投与する場合/併用する薬剤の種類によって満了日が異なるという現象が生じています。
そのため、「2型糖尿病」という一つの効能・効果の中で、いわゆる“虫食い”が認めれるか否かによって、2024年8月承認・12月薬価収載(ケース1)と2023年2月承認・6月薬価収載(ケース2)という二つのケースが考えられます。
ケース1は、「2型糖尿病」という一つの効能・効果の中で、いわゆる“虫食い”が認めれる場合です。
これは、物質特許(特許3681110)の2回目の延長期間の方が1回目の延長期間よりも早く満了するため、「2型糖尿病(ただし、以下のいずれかの治療で十分な効果が得られない場合に限る;③食事療法、運動療法に加えてチアゾリジン系薬剤を使用、④食事療法、運動療法に加えてα−グルコシダーゼ阻害剤を使用、⑤食事療法、運動療法に加えてビグアナイド系薬剤を使用、⑥食事療法、運動療法に加えて速効性インスリン分泌促進薬薬剤を使用」といった効能・効果で2023年2月に承認され、1回目の延長期間が満了する2024年8月に、「①食事療法、運動療法のみ、②食事療法、運動療法に加えてスルホニルウレア系薬剤を使用の効能・効果を追加し、先発と同じ「2型糖尿病」となるというケースです。
ケース2は、「2型糖尿病」という一つの効能・効果の中で、いわゆる“虫食い”が認めれない場合です。
これは、物質特許(特許3681110)の2回目の延長期間の方が1回目の延長期間よりも早く満了したとしても、1回目の延長期間が満了し先発と同じ「2型糖尿病」という効能・効果になるまでジェネリックが承認されず、2024年8月になって初めてジェネリックが承認されるというケースです。
いわゆる“虫食い”の可否
ジェネリックの効能・効果について、いわゆる“虫食い”が認められる根拠となっているのは、通知「薬食審査発第0605014号~医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査及び薬価収載に係る医薬品特許の取扱いについて~」と考えられます。
この通知では、「先発医薬品の一部の効能・効果、用法・用量(以下、「効能・効果等」という。) に特許が存在し、その他の効能・効果等を標ぼうする医薬品の製造が可能である場合については、後発医薬品を承認できることとすること」とされています。
この文言からすると、「2型糖尿病」という一つの効能・効果の中でも“虫食い”が認められると解釈できるようにも思えます。
医療費の削減という点では、“虫食い”が認められ、ジェネリックが早く薬価収載されるのが好ましいことには疑いの余地はありません。
一方で、併用薬によってジェネリックが使える場合と使えない場合が発生することが、医療機関とって好ましいかどうかという点については、疑問があります。また、ビルダグリプチンでは、2回目の延長期間の方が1回目の延長期間よりも早く満了するという現象が生じており、適応を拡大した結果、特許期間が短くなり、早くジェネリックに参入されるというのは、不合理ではないかという気もします。
今後、このような“虫食い”について、厚生労働省・医薬品医療機器総合機構がどのような判断をするかに注目していきたいと思います。
最後に
今回、アログリプチンとビルダグリプチンについて、適応拡大と特許延長の関係を整理しましたが、実際には、更に配合剤の承認に基づく延長が登録されており、その効力範囲を含めると、日本の特許延長制度はとても複雑であると思います。
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