ミカファンギンの製品情報
有効成分
一般名:ミカファンギンナトリウム
効能・効果
・アスペルギルス属及びカンジダ属による下記感染症
真菌血症、呼吸器真菌症、消化管真菌症
・造血幹細胞移植患者におけるアスペルギルス症及びカンジダ症の予防
剤形・規格
ファンガード®点滴用25mg(2006年6月薬価収載)
ファンガード®点滴用50mg(2002年12月薬価収載)
ファンガード®点滴用75mg(2002年12月薬価収載)
製造販売元
製造販売/アステラス製薬株式会社
ミカファンギンの基本特許
再審査期間が2010年10月に終了し、物質特許(特許2897427)が2019年4月に満了しため、2018年8月申請~2019年8月承認となりました。
承認されたのは、沢井製薬のミカファンギNa点滴静注用50mg「サワイ」/ミカファンギンNa点滴静注用75mg「サワイ」のみですが、ファンガード®と使用されている添加剤が異なるため(乳糖水和物とトレハロース水和物)、オーソライズド・ジェネリック(AG)ではないと考えられます。
また、「造血幹細胞移植患者におけるアスペルギルス症及びカンジダ症の予防」については、物質特許が2020年9月まで延長されていますので、沢井製薬のミカファンギNa点滴静注用50mg「サワイ」/ミカファンギンNa点滴静注用75mg「サワイ」の効能・効果は、「アスペルギルス属及びカンジダ属による下記感染症(真菌血症、呼吸器真菌症、消化管真菌症)」のみでした。
先発企業の製剤特許
基本特許以外にファンガード®を保護する製剤特許として、特許3381722が登録されており、2024年8月まで存続します。また、特許3381722から分割された特許4691866も登録されています。
特許3381722の内容は、「活性成分として式(I)の環状ポリペプチド化合物(⇒ミカファンギン)またはその医薬的に許容される塩および乳糖を含有する安定化された凍結乾燥型医薬組成物」で、ジェネリックは添加剤に乳糖を使用することが制限されます。
特許4691866の内容は、「活性成分として式(II):の環状ポリペプチド化合物(⇒ミカファンギン)またはその医薬的に許容される塩、ならびにマルトース、ショ糖および塩化ナトリウムからなる群から選択される1以上の安定化剤からなる安定化された凍結乾燥型医薬組成物」で、ジェネリックは添加剤にマルトース、ショ糖、塩化ナトリウムを使用することが制限されます。
沢井製薬は、これらの製剤特許を回避するために、これらの特許でクレームされていないトレハロースを添加剤として使用した製剤を開発したと考えられます。実際、沢井製薬のホームページでは、「特許を回避して製剤化を実現」と謳っています。
先発企業以外の製剤特許
ここで一つ気になることがあります。それは、沢井製薬のミカファンギNa点滴静注用「サワイ」とシャンハイ テックウェル バイオファーマシューティカルとの関係です。
シャンハイ テックウェル バイオファーマシューティカルは特許5723030を保有し、その内容は、「a)薬学的有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩(⇒ミカファンギン)と、b)薬学的許容量の安定化剤であるトレハロースとを含み、前記安定化剤であるトレハロースと式(I)の化合物又はその塩との重量比は100:1〜1:20であり、凍結乾燥製剤であることを特徴とする、抗真菌用の薬用組成物」です。
ミカファンギNa点滴静注用「サワイ」は、200mgのトレハロース水和物を含みますので、トレハロース:ミカファンギンの比は、4:1(50mg製剤)と2.7:1(75mg製剤)であり、ミカファンギNa点滴静注用「サワイ」と特許5723030との関連が疑われます。
①沢井製薬の製剤はシャンハイ テックウェル バイオファーマシューティカルから製造・供給されているのか、②沢井製薬はシャンハイ テックウェル バイオファーマシューティカルから特許5723030のライセンスを受けているのか、それとも、③両社には関係はなく、係争に発展した場合、争う用意があるのか、沢井製薬とシャンハイ テックウェル バイオファーマシューティカルとの関係がとても気になります。