2019年10月31日木曜日

2019年8月15日付医薬品承認情報~ミカファンギン~

 今回は、2019年8月15日付で承認されたミカファンギンNa点滴静注用について取り上げてみたいと思います。



ミカファンギンの製品情報


有効成分
一般名:ミカファンギンナトリウム
効能・効果
・アスペルギルス属及びカンジダ属による下記感染症
 真菌血症、呼吸器真菌症、消化管真菌症
・造血幹細胞移植患者におけるアスペルギルス症及びカンジダ症の予防
剤形・規格
ファンガード®点滴用25mg(2006年6月薬価収載)
ファンガード®点滴用50mg(2002年12月薬価収載)
ファンガード®点滴用75mg(2002年12月薬価収載)
製造販売元
製造販売/アステラス製薬株式会社



ミカファンギンの基本特許


効能・効果
再審査期間
特許2897427特許3381722特許4691866
物質特許製剤特許製剤特許
アスペルギルス属及びカンジダ属による下記感染症
真菌血症、呼吸器真菌症、消化管真菌症
2010/10/72019/4/232020/6/292020/6/29
造血幹細胞移植患者におけるアスペルギルス症及びカンジダ症の予防2011/1/252020/9/292024/8/32020/6/29

 再審査期間が2010年10月に終了し、物質特許(特許2897427)が2019年4月に満了しため、2018年8月申請~2019年8月承認となりました。
 承認されたのは、沢井製薬のミカファンギNa点滴静注用50mg「サワイ」/ミカファンギンNa点滴静注用75mg「サワイ」のみですが、ファンガード®と使用されている添加剤が異なるため(乳糖水和物とトレハロース水和物)、オーソライズド・ジェネリック(AG)ではないと考えられます。
 また、「造血幹細胞移植患者におけるアスペルギルス症及びカンジダ症の予防」については、物質特許が2020年9月まで延長されていますので、沢井製薬のミカファンギNa点滴静注用50mg「サワイ」/ミカファンギンNa点滴静注用75mg「サワイ」の効能・効果は、「アスペルギルス属及びカンジダ属による下記感染症(真菌血症、呼吸器真菌症、消化管真菌症)」のみでした。




先発企業の製剤特許


 基本特許以外にファンガード®を保護する製剤特許として、特許3381722が登録されており、2024年8月まで存続します。また、特許3381722から分割された特許4691866も登録されています。
 特許3381722の内容は、「活性成分として式(I)の環状ポリペプチド化合物(⇒ミカファンギン)またはその医薬的に許容される塩および乳糖を含有する安定化された凍結乾燥型医薬組成物」で、ジェネリックは添加剤に乳糖を使用することが制限されます。
 特許4691866の内容は、「活性成分として式(II):の環状ポリペプチド化合物(⇒ミカファンギン)またはその医薬的に許容される塩、ならびにマルトース、ショ糖および塩化ナトリウムからなる群から選択される1以上の安定化剤からなる安定化された凍結乾燥型医薬組成物」で、ジェネリックは添加剤にマルトース、ショ糖、塩化ナトリウムを使用することが制限されます。
 沢井製薬は、これらの製剤特許を回避するために、これらの特許でクレームされていないトレハロースを添加剤として使用した製剤を開発したと考えられます。実際、沢井製薬のホームページでは、「特許を回避して製剤化を実現」と謳っています。




先発企業以外の製剤特許


 ここで一つ気になることがあります。それは、沢井製薬のミカファンギNa点滴静注用「サワイ」とシャンハイ テックウェル バイオファーマシューティカルとの関係です。
 シャンハイ テックウェル バイオファーマシューティカルは特許5723030を保有し、その内容は、「a)薬学的有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩(⇒ミカファンギン)と、b)薬学的許容量の安定化剤であるトレハロースとを含み、前記安定化剤であるトレハロースと式(I)の化合物又はその塩との重量比は100:1〜1:20であり、凍結乾燥製剤であることを特徴とする、抗真菌用の薬用組成物」です。
 ミカファンギNa点滴静注用「サワイ」は、200mgのトレハロース水和物を含みますので、トレハロース:ミカファンギンの比は、4:1(50mg製剤)と2.7:1(75mg製剤)であり、ミカファンギNa点滴静注用「サワイ」と特許5723030との関連が疑われます
 ①沢井製薬の製剤はシャンハイ テックウェル バイオファーマシューティカルから製造・供給されているのか、②沢井製薬はシャンハイ テックウェル バイオファーマシューティカルから特許5723030のライセンスを受けているのか、それとも、③両社には関係はなく、係争に発展した場合、争う用意があるのか、沢井製薬とシャンハイ テックウェル バイオファーマシューティカルとの関係がとても気になります

2019年10月28日月曜日

2019年8月15日付医薬品承認情報~ブデソニド~

 今回は、2019年8月15日付で承認されたブデソニド吸入液について取り上げてみたいと思います。



ブデソニドの製品情報


有効成分
一般名:ブデソニド
効能・効果
気管支喘息
剤形・規格
パルミコート®吸入液0.25mg(2006年9月薬価収載)
パルミコート®吸入液0.5mg(2006年9月薬価収載)
製造販売元
製造販売/アストラゼネカ株式会社



ブデソニドの基本特許


効能・効果
再審査期間
特許1033476
製法特許
気管支喘息2010/7/6満了済

 日本で登録された物質特許は見当たらず、再審査期間も2010年7月に終了したため、いつでもジェネリックを出せる状況でしたが、今回が初めてのジェネリック承認となりました。
 承認されたのは、武田テバファーマのブデソニド吸入液0.25mg「武田テバ」/ブデソニド吸入液0.5mg「武田テバ」のみですが、添付文書によると、パルミコート®とは容器の形状、添加剤(クエン酸水和物と無水クエン酸)や保存期間が異なるようですので、AGではないと考えられます。
 ところで、吸入液の場合、生物学的同等性はどのように示しているのかが気になりました。過去、インタール®吸入液のジェネリックでは、動物を用いた試験を実施しているようですが、HPで公開されたブデソニド吸入液「武田テバ」の添付文書にはそのような記載が見当たりません。今後、インタビューフォーム等が公開されると思うので、生物学的同等性をどのように示しているのか確認してみたいと思います。

2019年10月24日木曜日

2019年8月15日付医薬品承認情報~ガンシクロビル~

 今回は、2019年8月15日付で承認されたガンシクロビル点滴静注用について取り上げてみたいと思います。




ガンシクロビルの製品情報


有効成分
一般名:ガンシクロビル
効能・効果
下記におけるサイトメガロウイルス感染症
・後天性免疫不全症候群
・臓器移植(造血幹細胞移植も含む)
・悪性腫瘍
剤形・規格
デノシン®点滴静注用500mg(1990年5月薬価収載(点滴静注用デノシンとして))
製造販売元
製造販売/田辺三菱製薬株式会社




ガンシクロビルの基本特許


効能・効果
再審査期間
特許1721035
物質特許
下記におけるサイトメガロウイルス感染症
・後天性免疫不全症候群
・臓器移植(造血幹細胞移植も含む)
・悪性腫瘍
2000/03/292002/05/20

 再審査期間は2002年3月に終了し、物質特許(特許1721035)も2002年5月に満了していたため、いつでもジェネリックを出せる状況でしたが、今回が初めてのジェネリック承認となりました。
 承認されたのは、マイラン製薬のガンシクロビル点滴静注用500mg「ファイザー」のみですが、デノシン®とは「性状」と「浸透圧比」が異なるため、オーソライズド・ジェネリック(AG)ではないと考えられます。
 2019年2月承認では屋号「ファイザー」の製品はありませんでしたので、2019年で唯一つの屋号「ファイザー」のジェネリックです。
 
 ところで、7月末、「ファイザー、特許切れ医薬品事業をマイランと統合する計画」というビックニュースがありました。今後、日本ではどのような事業展開になるのかが気になります。MylanのHPに掲載されているInvestor Presentationによれば、2020年中旬にディールをクローズさせる予定であり、その前に新しい社名がアナウンスされるそうです。現在、販売中の屋号「ファイザー」というジェネリックは、どうなるのでしょう。新会社へ承継され、新しい屋号に変更されるのでしょうか?この機に乗じた複数の製品の販売中止がないことを期待します。

2019年10月23日水曜日

2019年8月15日付医薬品承認情報~アプレピタント~

 今回は、2019年8月15日付で承認されたアプレピタントについて取り上げてみたいと思います。



アプレピタントの製品情報


有効成分
一般名:アプレビタント
効能・効果
抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む)
剤形・規格
イメンド®カプセル125mg(2009年12月薬価収載)
イメンド®カプセル80mg(2009年12月薬価収載)
イメンド®カプセルセット(2009年12月薬価収載)
製造販売元
製造販売/小野薬品工業株式会社




アプレピタントの基本特許


効能・効果
再審査期間
特許3245424特許4532114
物質特許製剤特許
現満了日:2014/12/13現満了日:2022/12/09
抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む)2017/10/152019/12/13
⇒年金未納で抹消!
2022/12/09

 物質特許(特許3245424)が年金未納により2016年10月に消滅し、再審査期間が2017年10月15日に終了したため、早ければ、2018年2月申請~2019年2月承認の可能性がありましたが、半年後の2019年8月承認となりました。これは、年金未納による抹消からの時間を考慮すると、物質特許が抹消されたことに気がつき、開発を早めたとしても2018年2月申請に間に合わせるのは困難であったためと考えられます。
また、沢井製薬と日本化薬の2社が承認を取得していますが、添付文書の内容から、2社の製品は共同開発であり、実質、1種類のジェネリックということになります。




製剤特許


 イメンド®カプセルとアプレピタントカプセル「サワイ」・「NK」の添加剤を比較すると、若干、異なりますが、よく似ています。

イメンドジェネリック
カプセル内容物ヒドロキシプロピルセルロース
ラウリル硫酸ナトリウム
精製白糖
結晶セルロース
ヒドロキシプロピルセルロース、
ラウリル硫酸ナトリウム、
白糖、
結晶セルロース
カプセルゼラチン
ラウリル硫酸ナトリウ ム
(三二酸化鉄)
(黄色三二酸化鉄)
酸化チタン
ゼラチン、
ラウリル硫酸ナトリウ ム、
(三二酸化鉄)
酸化チタン

 一方、イメンド®カプセルを保護する製剤特許(特許4532114)が登録されており、2022年12月まで存続します。特許4532114の内容は以下の通りです。

【請求項1】
138nm以下の有効平均粒子サイズを維持するために十分な量の少なくとも1つの表面安定化剤をその表面に吸着している化合物2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロ)フェニル−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチルモルホリンまたはその医薬適合性の塩を含むナノ粒子組成物であって、表面安定化剤が超低粘度ヒドロキシプロピルセルロースまたはラウリル硫酸ナトリウムである前記組成物。

 アプレピタントカプセル「サワイ」・「NK」は、特許4532114に記載されたとラウリル硫酸ナトリウムを含みます(ヒドロキシプロピルセルロースも含みますが、超低粘度かは不明)。沢井製薬と日本化薬は、添加剤の種類以外、例えば、平均粒子サイズで、特許4532114を回避しているものと思われます。




最後に

物質特許(特許3245424)が有効に存続していた場合、ジェネリックは2020年2月承認・6月薬価収載というスケジュールでした。年金未納により物質特許を失ったことにより、6ヶ月早くジェネリックの参入を許してしまったことになります。
 小野薬品工業のIR資料によると、2018年度のイメンド®とプロイメンド®の合計の売上は、106億円です。各製品の内訳は不明ですが、2020年の薬価改定を考慮すると、6ヶ月早いジェネリックの参入による影響は、それなりに大きいのではないでしょうか。

2019年10月17日木曜日

2019年8月15日付医薬品承認情報~ファスジル~

 今回は、2019年8月15日付で承認されたファスジルについて取り上げてみたいと思います。



ファスジル塩酸塩の製品情報


有効成分
一般名:ファスジル塩酸塩水和物
効能・効果
くも膜下出血術後の脳血管攣縮およびこれに伴う脳虚血症状の改善
剤形・規格
エリル®点滴静注液30mg(1995年8月薬価収載(エリル注として))
製造販売元
製造販売元/旭化成ファーマ株式会社



ファスジル塩酸塩の基本特許


基本特許

効能・効果
再審査期間
くも膜下出血術後の脳血管攣縮およびこれに伴う脳虚血症状の改善2001/06/29

 日本で登録された物質特許は見当たらず、再審査期間が2001年6月29日に終了したため、いつでもジェネリックを出せる状況ですが、今回、初めての承認となりました。
 ファスジル塩酸塩点滴静注液30mg「旭化成」は、テリボン®のAGの承認も取得している旭化成シンメッドが承認を取得していますので、AGと考えられます。

 旭化成の決算説明資料によると、2018年度主要製品の国内売上は、テリボン®:約283億円、リコモジュリン®:約118億、フリバス®:約33億、ブレディニン®:約30億、エルシトニン®:約23億、リクラスト®:約14億、ケブザラ®:約13億で、エリル®の記載はありません。そのため、エリル®の売上は、13億未満と思われます。
 先発医薬品の売上が13億程度だと、ジェネリックにとっては、それほど魅力的な市場とは思えませんし、今まで、ジェネリックが参入していないのも頷けます。何故、旭化成がこのタイミングでAGの承認を取得したのでしょうか?近々、ジェネリックが参入してくることを予見したのか、それとも他の理由があるのか、とても気になるところです。

2019年10月9日水曜日

2019年8月15日付医薬品承認情報~デフェラシロクス~

 今回は、2019年8月15日付で承認されたデフェラシロクスについて、「なぜこのタイミングでAGなのか?」という点に注目しながら取り上げてみたいと思います。



デフェラシロクスの製品情報(ジャドニュ®顆粒分包)


有効成分
一般名:デフェラシロクス
効能・効果
輸血による慢性鉄過剰症(注射用鉄キレート剤治療が不適当な場合)
用法・用量
通常、デフェラシロクスとして12mg/kgを1日1回、経口投与する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日量は18mg/kgを超えないこと。
剤形・規格
ジャドニュ®顆粒分包90mg(2017年11月薬価収載)
ジャドニュ®顆粒分包360mg(2017年11月薬価収載)
製造販売元
製造販売元/ノバルティス ファーマ株式会社



デフェラシロクスの製品情報(エクジェイド®懸濁用錠)


有効成分
一般名:デフェラシロクス
効能・効果
輸血による慢性鉄過剰症(注射用鉄キレート剤治療が不適当な場合)
用法・用量
通常、デフェラシロクスとして20mg/kgを1日1回、水100mL以上で用時懸濁し、空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日量は30mg/kgを超えないこと。
剤形・規格
エクジェイド®懸濁用錠125mg(2008年6月薬価収載)
エクジェイド®懸濁用錠500mg(2008年6月薬価収載)
製造販売元
製造販売元/ノバルティス ファーマ株式会社



デフェラシロクスの基本特許


製品名
効能・効果
再審査期間
特許3541042
物質特許
原満了日:2017/06/24
エクジェイド懸濁用錠輸血による慢性鉄過剰症(注射用鉄キレート剤治療が不適当な場合)2016/04/152021/02/20
ジャドニュ顆粒分包輸血による慢性鉄過剰症(注射用鉄キレート剤治療が不適当な場合)-2017/6/24
or
2021/2/20

 エクジェイド®懸濁用錠の承認に基づき、物質特許(特許3541042)が2021年2月20日まで延長されています。一方、ジャドニュ®顆粒分包の承認に基づく延長はありません。そのため、「エクジェイド®懸濁用錠の承認に基づき延長された物質特許の効力が、ジャドニュ®顆粒分包に及ぶのか?」という疑問が生じます。

 オキサリプラチン事件(平成28年(ネ)第10046号)において、延長登録された特許権の効力範囲についての考え方が示されており、ポイントは以下の通りです。

 ❝延長された特許権の効力は、政令処分で定められた「成分、分量、用法、用量、効能及び効果」によって特定された「物」(医薬品)のみならず、これと医薬品として実質同一なものにも及ぶ。❞ 

  ❝政令処分で特定された「物」(医薬品)と、対象製品とで異なる部分がある場合であっても、「僅かな差異又は全体的にみて形式的な差異にすぎないとき」には、その製品は、政令処分の対象となった物と「実質同一」なものに含まれ、延長された特許権の効力範囲に属する。❞ 

 ❝「僅かな差異又は全体的にみて形式的な差異」かどうかは、特許発明の内容に基づき、その内容との関連で、政令処分において定められた「成分,分量,用法,用量,効能及び効果」によって特定された「物」と対象製品との技術的特徴及び作用効果の同一性を比較検討して、当業者の技術常識を踏まえて判断すべき。❞

 ❝次の4つの場合、政令処分で特定された「物」(医薬品)と対象製品は「実質同一」なものと判断される。 

  1. 医薬品の有効成分のみを特徴とする特許発明に関する延長登録された特許発明において、有効成分ではない「成分」に関して、対象製品が、政令処分申請時における周知・慣用技術に基づき、一部において異なる成分を付加、転換等しているような場合 
  2. 公知の有効成分に係る医薬品の安定性ないし剤型等に関する特許発明において、対象製品が政令処分申請時における周知・慣用技術に基づき、一部において異なる成分を付加、転換等しているような場合で、特許発明の内容に照らして、両者の間で、その技術的特徴及び作用効果の同一性があると認められるとき 
  3. 政令処分で特定された「分量」ないし「用法,用量」に関し、数量的に意味のない程度の差異しかない場合 
  4. 政令処分で特定された「分量」は異なるけれども、「用法,用量」も併せてみれば、同一であると認められる場合❞

 オキサリプラチン事件は、上記②の場合について、具体的な判断がされています。

 ジャドニュ®顆粒分包の場合、エクジェイド®懸濁用錠と剤形が異なる上、用法・用量も異なるため、とても悩ましいところです。
 まず1.ですが、有効成分含量と用法・用量が異なるため、1.には該当しないと思います。次に2.ですが、延長されているのが物質特許であるため、2.にも該当しないと思います。残されたのは3と4ですが、分量と用法・用量がどちらも異なるため、4にも該当しないのではないかと思います。最後の3ですが、これはとても難しく、判断に迷うところです。



オーソライズド・ジェネリック(AG)


 2019年8月15日付で承認されたデフェラシロクス顆粒分包90mg/360mg「サンド」は、ノバルティスグループのサンドが承認を取得していますので、AGであると考えられます。
 しかし、先発医薬品であるジャドニュ®顆粒分包が承認されてから2年足らずしかたっていません。なぜこのタイミングでAGの承認を取得したのでしょうか?
 その理由は、「エクジェイド®懸濁用錠の承認に基づき延長された物質特許の効力が、ジャドニュ®顆粒分包に及ぶのか?」という点にあると考えられます。
 もし「エクジェイド®懸濁用錠の承認に基づき延長された物質特許の効力が、ジャドニュ®顆粒分包に及ぶ」と判断されれば、ジャドニュ®顆粒分包のジェネリックは、延長された物質特許が2021年2月20日に満了した後の2021年8月に承認されると考えられます。一方、もし「エクジェイド®懸濁用錠の承認に基づき延長された物質特許の効力が、ジャドニュ®顆粒分包に及ばない」と判断されると、物質特許の原満了日は既に経過し、再審査期間も設定されていないため、2021年8月よりも早くジャドニュ®顆粒分包のジェネリックが承認されることになります。
 ノバルティスは、これを危惧し、2019年8月にAGの承認を取得したのではないでしょうか。




最後に


 日本の特許延長制度は、欧米と比較するととても複雑です。ベバシズマブ(アバスチン)事件最高裁判決後の審査基準の改定により、より細かな延長登録が認めれこととなった一方、延長された特許権の効力が及ぶ範囲については、未だ不明確なところが多いと感じます。