2017年9月26日火曜日

8月15日付医薬品承認情報 ~オルメサルタン~

 今回は21社・103品目が承認されたオルメサルタンについて分析します。


オルメサルタンの製品情報

有効成分
一般名:オルメサルタン メドキソミル
効能・効果
高血圧症
剤形・規格
オルメテック錠5mg(2006年6月薬価収載)
オルメテック錠10mg(2004年4月薬価収載)
オルメテック錠20mg(2004年4月薬価収載)
オルメテック錠40mg(2010年4月薬価収載)
オルメテックOD錠5mg(2017年6月薬価収載)
オルメテックOD錠10mg(2015年12月薬価収載)
オルメテックOD錠20mg(2015年12月薬価収載)
オルメテックOD錠40mg(2015年12月薬価収載)
製造販売元
第一三共株式会社


オルメサルタン/アゼルニジピン配合錠の製品情報

有効成分
一般名:オルメサルタン メドキソミル/アゼルニジピン
効能・効果
高血圧症
剤形・規格
レザルタス配合錠LD(2010年4月薬価収載)
レザルタス配合錠HD(2010年4月薬価収載)
製造販売元
第一三共株式会社




オルメサルタンの基本特許


基本特許


 オルメサルタン単剤の基本特許として、オルメサルタンの物質特許が、オルメサルタン配合剤の基本特許として、オルメサルタンの物質特許に加え、アゼルニジピンの物質特許とオルメサルタンとアゼルニジピンの組合せに関する配合特許が登録されています。













オルメサルタン単剤


 AG以外のジェネリックは、オルメサルタンの物質特許が2017年2月21日に満了したため、2016年8月申請~2017年8月承認となっています。
 一方、第一三共エスファのオーソライズド・ジェネリック(AG)であるオルメサルタンOD錠「DSEP」とオルメサルタン錠「DSEP」は、特許権者から許諾を得ていますので、AG以外のジェネリックよりも半期早い2016年2月申請~2017年2月承認となっています。

 「特許が2月21日に満了するなら、2月に承認されるのでは?」と思った方もいると思います。私も不思議だったので、少し調べてみたところ、次のような通知がみつかりました。

医政発0210第1号通知 「医療用医薬品の薬価基準収載等に係る取扱いについて」
“後発医薬品(新医薬品、報告品目及び新キット製品以外の医療用医薬品をいう。以下同じ。)の薬価基準への収載手続きは、後発医薬品の収載を希望する製造販売業者(以下「後発医薬品収載希望者」という。)が、別紙様式1に定める薬価基準収載希望書を提出することにより行われるものであること。
なお、当該希望書は、原則として、2月15日及び8月15日(当該日が土曜日又は日曜日に該当するときは、その日後においてその日に最も近い平日とする。)までに医薬品医療機器法に基づく承認を受けた当該後発医薬品について、それぞれ当該年の3月10日及び9月10日までの指定する日までに提出すること。“
“後発医薬品 6月及び12月を標準とする。”

医政経発第0605001号 「医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査及び薬価収載に係る医薬品特許の取扱いについて」
“特許の存否は承認予定日で判断するものであること”

これらの通知から、
  1. ジェネリックの薬価収載のタイミングは6月と12月の年2回
  2. 2月15日/8月15日までに承認されないと6月/12月に薬価収載できない
  3. 2月21日に特許が満了する場合、ジェネリックは2月15日までには承認されないから、6月収載されない
ということが分かりました。
 そうすると、2017年2月21日に特許が満了するオルメサルタンのジェネリックは、2017年2月承認・6月薬価収載というサイクルに乗ることができないので、結局、2017年8月承認・12月薬価収載というサイクルになってしまったと推測されます。
 特許満了日が2月15日/8月15日をまたぐかどうかでジェネリックの参入が6ヶ月も違ってくるわけです。



オルメサルタン/アゼルニジピン配合剤


 オルメサルタンとアゼルニジピンの組合せに関する配合特許(特許3874419)が2027年4月に満了します。そのため、この特許が有効である限り、2027年8月までオルメサルタン/アゼルニジピン配合剤のジェネリックは承認されないと思われます。
 一方、第一三共エスファのオーソライズド・ジェネリック(AG)であるオルアゼ配合錠「DSEP」は、特許権者から許諾を得ていますので、2017年2月に既に承認されています。




各社の提携関係


 現在公開されている情報に基づき、承認された26社の提携関係を普通錠とOD錠に分けて分析してみました。

普通錠




















 ダイト、武田テバファーマ、エルメッドエーザイと共創未来ファーマについては、現時点で製品情報が公開されていなかったため、競合関係を分析することはできませんでした(※製品情報の公開後、更新予定)。


OD錠





















21社中、OD錠のみが2社、普通錠のみが13社、普通錠とOD錠の両方が6社という結果でした。





 承認取得26社中、17社がODの承認を取得したロスバスタチンと比較すると、オルメサルタンではOD錠の承認を取得した会社数は少ないです。先発企業である第一三共は、既に普通錠の販売を中止し、OD錠への切り替えを進めていますし、第一三共エスファのAGはOD錠のみの薬価収載ですので、普通錠のみのジェネリックにどのくらい需要があるかが気になるところです。
 また、外資系最大手のサンド・テバ・マイランの3社中、OD錠の承認を取得したのは、マイラン(ファイザー)のみでしたが、単独ではなくニプロのグループに属していました。やはり外資系メーカーは、OD錠のような日本特有の製剤開発は不得手であることがうかがえます。




オルメサルタン/アゼルニジピン配合剤のジェネリックはいつ?


配合特許(特許3874419)の満了前にAGの承認を取得した理由は?


 オルメサルタンとアゼルニジピンの組合せに関する配合特許(特許3874419)が2027年4月まで存続するので、この特許が有効である限り、2027年8月までオルメサルタン/アゼルニジピン配合剤のジェネリックは承認されません
このような場合、先行してAGの承認を取得するとしても、オルメサルタン単剤のようにAG以外のジェネリックよりも半期早い2026年8月申請~2027年8月承認というタイムラインとなるのが一般的だと思います。
 では、なぜ第一三共エスファは2017年2月にオルメサルタン/アゼルニジピン配合剤のAGであるオルアゼ配合錠「DSEP」の承認を取得したのでしょうか?
 理由は、特許3874419に対して無効審判が請求されていたからだと考えられます。特許3874419が無効になってしまうと、2027年8月承認・12月収載というタイムラインよりも早くジェネリック医薬品の参入されてしまいます。そこで、第一三共は、先手を打ってオルメサルタン単剤と同時期にAGの承認を取得してきたと考えられます。



特許3874419に対する無効審判の状況

審判番号:2016-800080
無効審判請求人:ニプロ 
事件の経過:
2016年7月審判請求→2017年1月口頭審理→2月審理終結通知→3月審決→5月確定
無効理由:進歩性(特許法29条2項)
結果:特許3874419を無効とすることはできない

 無効審判を請求したのはニプロです。特許庁は“特許は無効でない”という審決を下し、ニプロが知財高裁に出訴せず、この審決は確定しました。そのため、特許3874419は有効に維持されている状態です。



ニプロが無効審判を請求した狙い


 二プロは、他のジェネリックよりも早くとオルメサルタン/アゼルニジピン配合錠のジェネリックの承認を取得し、市場に参入することを意図し、特許3874419に対して無効審判を請求した考えられます。無効審判の審理には、10ヶ月程度はかかるため、2016年7月という無効審判請求時期から考えると、最速で2017年8月承認を狙っていたのではないでしょうか。



AG以外のジェネリックの承認はいつ?


 ニプロによる無効審判は、“特許は無効でない”という審決で確定しいるため、新たに無効審判が請求され、特許3874419が無効という判断がされない限り、特許3874419の満了後である2027年8月までオルメサルタン/アゼルニジピン配合剤のジェネリックは承認されないと考えられます。
 


AGの収載はいつ?


 特許3874419が有効である限り、2027年8月までAG以外のオルメサルタン/アゼルニジピン配合剤のジェネリックは承認されないと考えられます。ジェネリックが参入しくる見込みがないのであれば、AGを薬価収載する理由はありませんから、AGの薬価収載は、AG以外のジェネリックが参入する半期前の2027年6月かAG以外のジェネリックと同時の12月になるのではないでしょうか。
 また、特許3874419に対して新たに無効審判が請求された場合、第一三共は、審判の進行状況を勘案し、AGの薬価収載時期を判断してくると思われます(例えば、「8月に審決予告がされ、特許が無効と判断される恐れがある場合、12月に薬価収載する」、「8月に審理終結通知がされ、特許が維持できそうな場合、12月の薬価収載は見送る」など)。
 
 特許3874419は、AG以外のジェネリックの承認とAGの薬価収載を左右する要因ですので、特許3874419の今後の動向が注目されます。


 2017年8月に承認された製品のうち、初承認の製品と大型製品については、一通り分析したかなと思っています。もし分析してみたら面白そうな製品などがありましたら、コメントやリクエストをいただけると幸いです。



2017年9月21日木曜日

8月15日付医薬品承認情報 ~ロスバスタチン 後編~

 前回に引き続き、ロスバスタチンについて分析します。今回は、AGのみに承認されている「家族性高コレステロール血症」にフォーカスしてみたいと思います。


「家族性高コレステロール血症」がAGのみな理由は?


 「家族性高コレステロール血症」の効能・効果がAGのみに承認されている理由は、「家族性高コレステロール血症」の効能。効果を保護する用途特許(特許5062940)があるためと考えられます。




特許5062940の内容


 特許5062940の内容は、
【請求項1】
(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル](3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸、または医薬的に受容可能なその塩を含有する、ヘテロ型家族性高コレステロール血症の患者の治療に使用するための薬剤。
です。

(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル](3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸はロスバスタチンですので、ロスバスタチンのヘテロ型家族性高コレステロール血症への治療用途を保護しています。




ジェネリックに「家族性高コレステロール血症」が追加されるのはいつ?


特許5062940の満了日


 特許5062940がいつ満了するかは、「特許権の存続期間の延長」制度との関係で、普通錠とOD錠とで異なります。特許5062940の原満了日は、出願日である2001年11月16日から20年後の2021年11月16日ですが、クレストール錠の剤形追加であるクレストールOD錠が2016年2月に承認されたことに基づき、1年7ヶ月27日の存続期間の延長がされています。そのため、延長がされていない普通錠については、2021年11月16日に、OD錠については、2023年7月23日に満了します。













ジェネリックの効能追加の時期


 特許5062940は、普通錠については、2021年11月16日に満了し、OD錠については、2023年7月23日に満了しますから、ジェネリックの「家族性高コレステロール血症」の効能追加されるのは、普通錠については、2021年11月17日以降OD錠については、、2023年7月24日以降になると考えられます。





特許5062940に対する無効審判


審判事件(2017-800048)


無効審判請求人:沢井製薬
事件の経過:2017年4月-審判請求→7月-答弁書→8月-請求取下

 「家族性高コレステロール血症」の効能・効果を保護する特許5062940に対し、今年の4月に沢井製薬が無効審判請求をしています。沢井製薬は、特許5062940を無効にすることにより、いち早く「家族性高コレステロール血症」の効能・効果を追加することを意図し、無効審判請求したものと推測されます。
しかし、特許権者側の答弁書が7月31日提出された直後の8月1日に、沢井製薬は審判請求を取下げています。


沢井製薬が無効審判を取下げた理由は?


 沢井製薬が無効審判を取下げた理由としては、
  1. 特許5062940の無効化をあきらめた
  2. 特許権者と無効審判を取下げることで合意した
が考えられます。

 沢井製薬の経営判断として、無効審判請求を取下げるという判断がされたという可能性はあります。しかし、一旦は沢井製薬として無効審判請求をするという判断をしたにもかかわらず、特許権者の答弁書提出直後に何の反論もすることなくあきらめるというのは、沢井製薬にあまりメリットが無く、1.は合点がいきません
 一方、“沢井製薬が特許権者からライセンスを受けることを条件に、無効審判の取下げに合意した”と考えると、特許5062940が有効に維持されることで、ジェネリック競合他社よりも早く沢井製薬だけが「家族性高コレステロール血症」の効能・効果を取得できるというメリットが生じます。また、特許権者側にも、全てのジェネリックに「家族性高コレステロール血症」の効能・効果を取得されるという状況を回避できるというメリットが生じます。2.の方が1.よりも合点がいくように思います。


沢井製薬の「家族性高コレステロール血症」の効能追加の時期は?


 1.の場合、家族性高コレステロール血症」の効能追加されるのは、無効審判請求を
していない他のジェネリックと同様に、普通錠については、2021年11月17日以降OD錠については、、2023年7月24日以降になると考えられます。
 2.の場合、ライセンス条件によりますが、8月15日に承認を取得した後、直ちに「家族性高コレステロール血症」の効能追加の一変を行い、早ければ来年の2月頃には「家族性高コレステロール血症」の効能が承認されると推測されます。
 沢井製薬がいつ「家族性高コレステロール血症」の効能を取得するかが注目です。また、沢井製薬の動きを受けて、他のジェネリックの中には特許5062940に対して無効審判請求してくる会社もあるかもしれません。他のジェネリックの動向にも注目です。


 次回は、オルメサルタンについて分析します。





2017年9月18日月曜日

8月15日付医薬品承認情報 ~ロスバスタチン 前編~

 今回は26社・87品目が承認されたロスバスタチンについて分析します。


ロスバスタチンの製品情報


有効成分
一般名:ロスバスタチンカルシウム
効能・効果
高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症
剤形・規格
クレストール錠2.5mg(2005年3月薬価収載)
クレストール錠5mg(2005年3月薬価収載)
クレストールOD錠2.5mg(2016年6月薬価収載)
クレストールOD錠5mg(2016年6月薬価収載)
製造販売元
アストラゼネカ株式会社(発売 塩野義製薬株式会社)


ロスバスタチンの基本特許


 ロスバスタチンの基本特許は以下の通り。












 オーソライズド・ジェネリック(AG)である第一三共エスファのロスバスタチン錠2.5mg・5mg「DSEP」は、特許権者から許諾を得ていますので、AG以外のジェネリックよりも半期早い2016年2月申請~2017年2月承認となっています。
一方、AG以外のジェネリックは、ロスバスタチンの物質特許が2017年5月に満了したため、2016年8月申請~2017年8月承認となっています。
また、「家族性高コレステロール血症」の効能・効果を保護する用途特許(特許5062940)があるため、AG以外のジェネリックの効能・効果は、「高コレステロール血症」のみとなっています。



各社の提携関係


 現在公開されている情報に基づき、承認された26社の提携関係を普通錠とOD錠に分けて分析してみました。


普通錠























OD錠
























 Meiji Seikaファルマと武田テバファーマについては、現時点で製品情報が公開されていなかったため、競合関係を分析することはできませんでした(※製品情報の公開後、更新予定)。

 26社中17社がOD錠の承認を、9社が普通錠のみ承認を取得しました。
普通錠のみだった9社は、サンド、武田テバファーマ、武田テバ薬品、ファイザー(マイラン)、日新製薬、キョーリンリメディオ、ニプロ、日本薬品工業、富士フイルムファーマで、外資系最大手のサンド・テバ・マイランの3社が揃ってOD錠の承認を取得していません。先発品のクレストールOD錠は日本特有の製品です。外資系メーカーは日本特有の製剤開発は不得手であることがうかがえます。また、17社のOD錠は、共同開発関係にある会社が多く、10社が共同開発を行っているというのが特徴的です。



OD錠の共同開発の開発元はどこ?


 OD錠の共同開発は、三和化学・ダイト・陽進堂・辰巳化学・共和薬品工業・日医工・日本ジェネリック・日本ケミファのグループ(グループ1)大原薬品工業・共創未来ファーマのグループ(グループ2)があるようです。これら二つの共同開発グループのうち、実際の開発元を分析してみたいと思います。


特許出願


 グループ1とグループ2の会社のロスバスタチンに関連すると考えられる出願を検索したところ、11件の出願がヒットしてきました(検索式: [発明の名称+要約+クレーム=ロスバスタチン] X [出願人=三和化学+陽進堂+ダイト+辰巳化学+日医工+日本ケミファ+日本ジェネリック+大原薬品+共創未来])。

No.出願番号発明の名称公報番号出願人
1特願2016-241746ロスバスタチンカルシウムの光安定性が向上したフィルムコーティング錠剤特開2017-48254大原薬品工業
2特願2016-160252光安定性が向上した、ロスバスタチンカルシウム製剤包装体特開2017-39718大原薬品工業
3特願2016-9235ロスバスタチンカルシウム製剤及びレーザー照射によるフィルムコーティング錠の印字方法特開2016-135782日本ケミファ
4特願2015-190529HMG-CoAレダクターゼ阻害薬を含有する医薬製剤特開2016-69382三和化学
5特願2015-140208ロスバスタチンカルシウムを含有する錠剤特開2016-169198大原薬品工業
6特願2015-122950ロスバスタチンカルシウムの安定性が向上した錠剤特開2017-7964大原薬品工業
7特願2015-110019ロスバスタチンカルシウムの光安定性が向上したフィルムコーティング錠剤特許6095176大原薬品工業
8特願2015-99071ロスバスタチン含有口腔内速崩壊錠特許6108635ダイト
9特願2014-220770安定なロスバスタチンカルシウム錠剤特開2016-79162日本ジェネリック
10特願2014-171586ロスバスタチンカルシウムの安定性を向上させた保存方法特開2016-44164ダイト
11特願2014-57458ロスバスタチン含有医薬製剤特開2015-178482日医工

 各出願の実施例とグループ1とグループ2のロスバスタチンOD錠で使用されている添加剤を比較したところ、グループ1はダイトの特願2015-99071の実施例1と、グループ2は大原薬品工業の特願2016-160252の実施例1と極めて高い相同性が確認できました。

出願番号出願人実施例1実施例1
特願2016-160252大原薬品工業ロスバスタチンカルシウム
D-マンニトール
低置換ヒドロキシプロピルセルロース
クロスポピドン
スクラロース
l-メントール
ステアリン酸マグネシウム 
ロスバスタチンカルシウム
D‐マンニトール
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース
クロスポビドン
スクラロース
l‐メントール
ステアリン酸マグネシウム
特願2015-99071ダイトロスバスタチンカルシウム
マンニトール
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース
炭酸水素ナトリウム
オイドラギッド(アミノアルキルメタクリレートコポリマーE)
D-マンニトール
クロスポビドン
結晶セルロース
スクラロース
l-メントール
ステアリン酸マグネシウム
酸化チタン
黄色三二酸化鉄
ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー

マクロゴール
ロスバスタチンカルシウム

低置換度ヒドロキシプロピルセルロース
炭酸水素ナトリウム
アミノアルキルメタクリレートコポリマーE
D-マンニトール
クロスポビドン
結晶セルロース
スクラロース
l-メントール
ステアリン酸マグネシウム
酸化チタン
黄色三二酸化鉄
ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー

 この結果から、グループ1の開発元はダイトグループ2の開発元は大原薬品工業と推測されます。


 次回は、~ロスバスタチン 後編~として、「家族性高コレステロール血症」にフォーカスしてみたいと思います。




2017年9月15日金曜日

8月15日付医薬品承認情報 ~ドルゾラミド/チモロール配合点眼液~

 参天アイケアが承認を取得したドルゾラミド/チモロール配合点眼液(ドルモロール配合点眼液)について分析します。


ドルゾラミド/チモロール配合点眼液の先発品情報


有効成分
一般名:ドルゾラミド塩酸塩/チモロールマレイン酸塩
効能・効果
緑内障、高眼圧症
剤形・規格
コソプト配合点眼液(2010年6月薬価収載)
コソプトミニ配合点眼液(2015年5月薬価収載)
製造販売元
参天製薬株



ドルゾラミド/チモロール配合点眼液の基本特許


 ドルゾラミド/チモロール配合点眼液の基本特許は以下の通り。









 ドルゾラミドの物質特許(特許1909232)は、2012年7月に、ドルゾラミド/チモロールの組合せに係る配合特許(特許2527513)は、2015年7月に満了しています。再審査期間が2016年4月15日に終了したため、再審査終了後の2016年8月申請~2017年8月承認となったと考えられます。


参天アイケアのドルモロール配合点眼液はAG?


 今回、承認されたのは参天アイケアのドルモロール配合点眼液のみでした。参天製薬からプレスリリース等は出されていませんが、参天アイケアは参天製薬のグループ会社ですからオーソライズド・ジェネリック(AG)であると考えられます。



AG以外のジェネリックの承認はいつ?


AG以外のジェネリックの承認時期


 医薬品医療機器号機構のHPでMF登録状況を確認したところ、次のMF登録がされていました。
MF登録番号初回登録年月日登録品目名登録者名
229MF100372017年2月8日Dorzolamide HydrochlorideMICRO LABS LIMITED
227MF100112015年1月5日ドルゾラミド塩酸塩CRYSTAL PHARMA, S.A.
223MF100952011年6月29日Dorzolamide HydrochlorideZaCh System S.p.A.

 ドルゾラミドのMF登録がされていることから、ドルゾラミドを有効成分とする点眼剤の開発をしている気配はあるものの、残念ながら、いつAG以外のジェネリックが製造販売承認申請されるかを分析することはできませんでした。平成29年2月に新たにMF登録がされていることに注目すると、AG以外のジェネリックは、早ければ2018年2月には承認されると思われます。


製剤特許のハードルは?


 簡易的に先発品をカバーする製剤特許がないか検索したが、目ぼしいものはヒットしませんでした。 また、2015年7月に満了したドルゾラミド/チモロールの組合せに係る配合特許(特許2527513)の実施例を確認したところ、ドルゾラミド、チモロール、塩化ベンザルコニウム、ヒドロキシエチルセルロース、マンニトール、クエン酸ナトリウムとpH調節剤を含むの眼科薬剤組成物が記載されていました。
 そのため、前回分析したトラボプロスト点眼液とは異なり、先発品であるコソプト配合点眼液と同じ添加剤を使用できると思われます。
 先発品と同じ添加剤を使用する場合、生物学的同等性試験の負担が軽減されますので、2018年2月以降に承認されるであろうAG以外のジェネリックがどのような添加剤を使用し、どのような試験を行っているかが注目です。


AGの12月収載あるのか?


 参天製薬の2017年3月期の有価証券報告書によると、コソプト配合点眼液の売上は114億円であり、医療用医薬品事業の売上の約9%占める主力製品です。2017年8月承認品の中では、イルベサルタンに次ぐ市場規模を有する製品ですから、参天製薬は、再審査期間終了後の2016年8月申請~2017年8月承認のジェネリックを見越して、グループ会社である参天はアイケアでAGの承認を取得したと思われます。そのため、この8月に承認を取得したジェネリックがいなかったことは予想外であったのではないでしょうか。
 
 2017年12月にAGを薬価収載した場合、コソプト配合点眼液は新薬創出加算の適用を失い、2018年の薬価改定で薬価が大幅に引き下げられてしまいます。「8月15日付医薬品承認情報 ~モメタゾン点鼻液 後編~」で分析した通り、過去、新薬創出加算の適用を失ってまでAGが薬価収載されたことはありません。更に、点眼剤はジェネリックに切り替わりにくい領域とされています。
そのため、2017年12月にAGを薬価収載することはないのではないでしょうか。

 AGとAG以外のジェネリックの今後の動向に注目したいと思います。

 次回はドロスバスタチンについて分析します。






2017年9月14日木曜日

8月15日付医薬品承認情報 ~トラボプロスト点眼液~

 今回はサンドが承認を取得したトラボプロスト点眼液について分析します。


トラボプロスト点眼液の先発品情報


有効成分
一般名:トラボプロスト
効能・効果
緑内障、高眼圧症
剤形・規格
トラバタンズ点眼液0.004%(2007年9月薬価収載)
製造販売元
ノバルティスファーマ(販売提携 アルコン ファーマ)



トラボプロスト点眼液の基本特許


 トラボプロスト点眼液の基本特許は以下の通り。








 トラボプロスト点眼液の基本特許(物質特許及び用途特許)は、2014年に満了し、再審査期間も2015年7月に終了しています。早ければ、2015年8月申請~2016年8月承認~12月薬価収載というタイムラインも可能と思われますが、2017年8月に初承認にとなっています。
 トラボプロスト/チモロール マレイン酸配合点眼液(先発名:デュオトラバ配合点眼液)のジェネリックは、用途特許が2018年8月12日に満了するため、2017年8月申請~2018年8月承認となると考えられます。



トラボプロスト点眼液はAG?


 今回、承認されたのはサンドのトラボプロスト点眼液のみでした。サンドとノバルティスからプレスリリース等は出されていませんが、サンドはノバルティスのグループ会社ですからオーソライズド・ジェネリック(AG)であると考えられます。



なぜ今、AGなのか?


 再審査期間と基本特許からは、早ければ2016年8月にトラボプロスト点眼液のAGの承認を取得できたと考えられます。残念ながら、なぜサンドがこの8月にAGの承認を取得したかを分析することはできませんでした
考えられる理由としては、

  1. AGに積極的に参入するという企業方針になった、
  2. 何らかの方法でジェネリックが開発されているという動きを察知し(例えば、MF登録された、ジェネリックメーカーが生物学的同等性試験に使用する先発品が購入された等)、対抗してAGの承認と取得した
などが考えられるかと思います。



AGの12月収載あるのか?


 再審査期間が2016年4月15日に終了したため、AGは、2016年8月申請~2017年8月承認となったと考えられます。一方、「8月15日付医薬品承認情報 ~モメタゾン点鼻液 後編~」で分析しましたが、過去、新薬創出加算の適用を失ってまでAGを投入した製品はありませんでした。また、ノバルティスは既にいくつかAGを発売していますが、今のところ、通常のジェネリックに先行してAGを発売した前例はありません

AG承認AG収載GE承認GE収載トリガー
オクトレオチド酢酸塩皮下注2010-012016-122016-022016-06
バルサルタン錠2013-082014-062014-022014-06特許
ゾレドロン酸点滴静注2014-022014-062014-022014-06再審査
アムバロ配合錠2015-082015-122015-082015-12特許
バルヒディオ配合錠2016-022016-062016-082016-12特許
エカレボ配合錠2017-08
トラボプロスト点眼液2017-08

そのため、2017年12月にAGを薬価収載することはないのではないでしょうか。
AGの今後の動向に注目したいと思います。



AG以外のジェネリックの承認はいつ?

点眼剤のジェネリックのハードル


 点眼剤のジェネリックの場合、錠剤とは異なるハードルがあります。
 医薬品医療機器総合機構(PMDA)のHPに「水性点眼剤の後発医薬品の生物学的同等性評価に関する基本的考え方」というものが掲載されています。
これによると、
“点眼剤の生物学的同等性評価に係る試験では、標準製剤と試験製剤につき、ヒトを対象とした適切な被験者集団における薬理効果又は臨床効果を指標とした試験を実施する。なお、試験の実施方法等については、適宜、審査当局と事前に相談し、適切な試験を計画し、実施することが望ましい。”

“試験製剤の添加剤の種類及び含量(濃度)が、医薬品の製剤特性に及ぼす影響を考慮して標準製剤と同一で、pH、粘度、浸透圧などの物理化学的性質が近似していると見なせる場合には、生物学的同等性試験は原則として不要である。”
とされています。
つまり、製剤特許等によって先発製剤と同じ添加剤を使用できないような事情があり先発品と異なる添加剤をジェネリックが使用すると、錠剤のように健常成人男性を被験者として薬剤の血中動態を見ることだけでは足りず、効果を見る臨床試験に近い試験が課されることになるわけです。


トラボプロスト点眼液の製剤特許


 トラボプロスト点眼液の製剤特許にフォーカスし、先発品と関連しそうな特許を調べたところ、2027年9月に満了する次の3件が発見されました。

特許番号発明の名称特許権者満了日請求項1
特許4785970自己保存型水性医薬組成物アルコン9/20/20270.04乃至0.4mMの濃度で亜鉛イオンを含み、組成物中に存在するアニオン種の濃度は15mM未満である、複数回用量の自己保存型眼科用組成物。
特許5411897自己保存型水性医薬組成物アルコン9/20/2027複数回用量自己保存型眼科用組成物であって、
該組成物中に0.001~0.005w/v%の濃度で塩化亜鉛の形態で提供される亜鉛イオンと;
0.5~1.2w/v%の濃度のホウ酸塩と;
0.25~1.25w/v%の濃度のプロピレングリコールと;
0.05~0.5w/v%の濃度のソルビトールと;
0.5w/v%の濃度のポリオキシル40硬化ヒマシ油と;
を含有し、ここで:
(i)該組成物中のアニオン種の濃度は10mM未満であり;
(ii)該組成物中の多価緩衝アニオンの濃度は5mM未満であり;
(iii)該組成物中の亜鉛以外の多価金属カチオンの濃度は5mM未満であり;
(iv)該組成物は、該組成物がUSP27保存効力要件を満たすに十分な抗菌活性を示し;そして
(v)該組成物は5.5~5.9のpHを有する、
組成物。
特許5394927自己保存性水性医薬品組成物アルコン9/20/2027マルチドーズ型点眼用組成物であって、前記組成物が、
ベータ-遮断薬、カルボニック・アンヒドラーゼ阻害剤、プロスタグランジン類似体、神経保護薬、抗血管新生薬、キノロン類、抗炎症薬、増殖因子、免疫抑制剤、および抗アレルギー薬からなる群から選択される、治療有効量の点眼用治療薬;ならびに
i.0.3~1.5w/v%の該組成物中の濃度のホウ酸塩であって、ここで、該ホウ酸塩が1種以上のホウ酸塩を含む、ホウ酸塩;
ii.0.6~2.0w/v%の該組成物中の濃度のポリオールであって、ここで、該ポリオールがソルビトールおよびプロピレングリコールを含む、ポリオール;および
iii.0.00075~0.0025w/v%の該組成物中の濃度において塩化亜鉛により提供される亜鉛イオンを含む防腐系
を含み、
ここで、該防腐系は、充分な抗菌活性を有して該組成物がUSP26防腐効果の要件を満たすことを可能にし、そしてここで、該組成物はアミノアルコールを含まず、そして該組成物は、塩化ベンザルコニウム、ポリクオタニウム-1および過酸化水素から選択される防腐剤を含まない、
組成物。


先発品(トラバタンズ点眼液)との対比


 先発品であるトラバタンズ点眼液の組成と各特許の請求項と実施例との組成を比較したところ、それぞれの組成に相同性が確認できました。特に、特許4785970・特許5411897の実施例の組成がトラバタンズ点眼液の組成と酷似しています。


特許番号請求項の組成実施例の組成トラバタンズ点眼液の組成
特許4785970ポリオキシル40硬化ヒマシ油
塩化亜鉛
ホウ酸
ソルビトール
プロピレングリコール
ポリオキシル40硬化ヒマシ油
塩化亜鉛
ホウ酸
ソルビトール
プロピレングリコール
水酸化ナトリウム/塩酸
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40
塩化亜鉛
ホウ酸
D-ソルビトール
プロピレングリコール
pH調節剤2成分
特許5411897ポリオキシル40硬化ヒマシ油
塩化亜鉛
ホウ酸
ソルビトール
プロピレングリコール
ポリオキシル40硬化ヒマシ油
塩化亜鉛
ホウ酸
ソルビトール
プロピレングリコール
水酸化ナトリウム/塩酸
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40
プロピレングリコール
ホウ酸
D-ソルビトール
塩化亜鉛
pH調節剤2成分
特許5394927塩化亜鉛
ホウ酸
ソルビトール
プロピレングリコール
デキストラン70
HPMC
プロピレングリコール
ホウ酸
ソルビトール
塩化ナトリウム
塩化カリウム
塩化カルシウム
塩化マグネシウム
塩化亜鉛
AMP
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40
プロピレングリコール
ホウ酸
D-ソルビトール
塩化亜鉛
pH調節剤2成分

 各特許がトラバタンズ点眼液を保護しているか結論を出すためには、トラバタンズ点眼液を分析し、各添加剤の配合量を特定する必要はあるものの、この3件の特許とトラバタンズ点眼液の関連が強く疑われます。そのため、これら3件の特許は、ジェネリックの開発の障害となり得ると思われます。



AG以外のジェネリックの承認はいつ?


 医薬品医療機器号機構のHPでMF登録状況を確認したところ、次のMF登録がされていました。

MF登録番号初回登録年月日最新登録年月日登録品目名登録者名
227MF101532015年6月1日2017年2月28日トラボプロストCayman Pharma s.r.o.
227MF101362015年5月12日2017年1月13日トラボプロストCHINOIN Pharmaceutical and Chemical Works Private Co.Ltd.
227MF101952015年8月3日2015年8月3日トラボプロスト「製造専用」Yonsung Fine Chemicals Co.,Ltd.

残念ながら、いつAG以外のジェネリックが製造販売承認申請されるかを分析することはできませんでしたが、最新登録が2017年1月・2月のMFがあることから、トラボプロスト点眼液を開発している気配がうかがえますので、AG以外のジェネリックは、早ければ2018年2月には承認されると思われます。
 先発品と同じ添加剤が使用できない場合、ジェネリックにも効果を見る臨床試験に近い試験が課されますので、2018年2月以降に承認されるであろうAG以外のジェネリックがどのような添加剤を使用し、どのような試験を行っているかが注目です。


次回はドルゾラミド/チモロール配合点眼液(ドルモロール)について分析します。

2017年9月12日火曜日

トラスツズマブ

 2017年9月8日付けで中外製薬から「ハーセプチン®注射用に関する特許権侵害訴訟の提起および仮処分命令の申立てについて」。というプレスリリースがされたので、予定を変更して、トラスツズマブについて分析します。


トラスツズマブの製品情報


有効成分
一般名:トラスツズマブ(遺伝子組換え)
効能・効果
○HER2過剰発現が確認された乳癌
○HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌
剤形・規格
ハーセプチン注射用60(2004年6月薬価収載)
ハーセプチン注射用150(2001年6月薬価収載)
製造販売元
中外製薬株


中外製薬のプレスリリース


 中外製薬のプレスリリースによれば、
”ハーセプチン®バイオ後続品の製造販売承認申請者である日本化薬株式会社に対し、ロシュ・グループのジェネンテック社が保有する用途特許の侵害を理由として、8月17日付で東京地方裁判所にバイオ後続品の製造販売等の差し止めを求める訴訟を提起し、併せて仮処分命令の申立てを行った”
とのことです。


日本化薬のトラスツズマブのバイオシミラーの開発状況


 日本化薬のプレスリリースによれば、韓国のセルトリオン社と共同開発を進めていたトラスツズマブのバイオシミラー(開発コード:CT-P6)の製造販売承認申請を2017年4月11日に行っているようです。ただし、申請から承認までは約1年かかるので、まだ承認はされていません。
 中外製薬は、薬事審査中にバイオシミラーに対し、製造販売等の差し止めを求める訴訟の提起と仮処分命令の申立てを行ってきたことになります。承認前にこういったアクションが起こるのはとても珍しいケースのように思います。


訴訟の対象特許は?


トラスツズマブの基本特許


登録番号発明の名称特許権者満了日請求項1
特許3040121増殖因子レセプターの機能を阻害することにより腫瘍細胞を処置する方法ジェネンテク1/5/2014HER2タンパク質の細胞外ドメインと特異的に結合するモノクローナル抗体であって、治療有効量の該抗体で加療中の患者内で、HER2タンパク質を過剰に発現する腫瘍細胞の増殖を阻害する抗体。
特許4124480免疫グロブリン変異体ジェネンテック4/5/2015アミノ酸配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAV
AWYQQKPGKAPKLLIYSASFLESGVPSRFSGSR
SGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFG
QGTKVEIKRT
を含むポリペプチド。

 特許3040121は、HER2タンパク質を過剰に発現する腫瘍細胞の増殖を阻害するHER2タンパク質の細胞外ドメインと特異的に結合するモノクローナル抗体全てを保護し、特許4124480は具体的な抗体を保護しています。
 この2件の特許がトラスツズマブの基本特許と考えられますが、これらの基本特許は既に満了しています。


対象特許


 中外製薬のレスリリースには、“ジェネンテック社が保有する用途特許の侵害を理由として”と記載されてはいますが、具体的な特許番号は記載されていませんでした。
 しかし、現在、次の2件の特許権に対して無効審判が請求されていることから、少なくともこれらのいずれかが関係していると推測されます。

登録番号発明の名称特許権者満了日請求項1
特許5818545抗ErbB2抗体を用いた治療のためのドーセージジェネンテック8/25/2020(i)抗ErbB2抗体huMab4D5-8を含有し、8mg/kgの初期投与量と6mg/kg量の複数回のその後の投与量で前記抗体を各投与を互いに3週間の間隔をおいて静脈投与することにより、HER2の過剰発現によって特徴付けられる乳癌を治療するための医薬組成物が入っている容器、及び(ii)前記容器に付随するパッケージ挿入物を具備するパッケージ。
特許5623681抗-ErbB2抗体による治療ジェネンテック5/9/2020ErbB2タンパク質が発現した乳腫瘍であると診断されたヒトの患者を治療するための、治療的有効量のヒト化4D5抗ErbB2抗体を含有してなる医薬であって、該治療が(a)該医薬によって患者を治療する、(b)外科的に腫瘍を除去する、及び(c)該医薬又は化学療法剤によって患者を治療するという工程を順次行うことを含む治療である、医薬。


無効審判の状況

登録番号無効審判番号無効審判請求人無効審判参加人審決出訴事件番号
特許5818545
無効2016-800071
(H28/06/17)
セルトリオンファイザー 無効でない
(H29/07/05)
-
無効2017-800062
(H29/05/10)
ファイザー -係属中-
特許5623681無効2016-800021
(H28/02/15)
セルトリオン-無効でない
(H28/12/27)
平29行ケ10106
(H29/05/10)
 
 特許5818545については、セルトリオンが平成28年6月に無効審判を請求し、その後、ファイザーが参加し、今年の7月に特許を維持する審決が下りています。
特許5623681については、セルトリオンが平成28年2月に無効審判を請求し、平成28年12月に特許を維持する審決が下りています。


セルトリオンとファイザーの関係


 ファイザーのHPで開発品目を確認したところ、適応症をHER2過剰発現が確認された乳がん/HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃がんとするバイオシミラー(PF-05280014)がPhase IIIとのこです。ファイザーがセルトリオンの請求した無効審判に参加し、別途、独自に無効審判をしている理由はここにあると考えられます。
 また、セルトリオンとファイザーの関係ですが、Web検索したところ、ファイザーが買収したホスピーラが欧米でトラスツズマブのバイオシミラーしていたようですので、セルトリオンとファイザーはそれぞれ異なる製品を開発していると推測されます。


特許係争の行方は?


効能・効果/用法・用量の変遷


承認時
効能・効果
HER2 過剰発現が確認された転移性乳癌
用法・用量
通常、成人に対して1日1回、トラスツズマブ(遺伝子組換え)として初回投与時には4mg/kg(体重)を、2回目以降は2mg/kgを90分以上かけて1週間間隔で点滴静注する。

2008年2月(下線部追加部分)
効能・効果
HER2 過剰発現が確認された転移性乳癌
HER2 過剰発現が確認された乳癌における術後補助化学療法
用法・用量
1.HER2 過剰発現が確認された転移性乳癌
通常、成人に対して1日1回、トラスツズマブ(遺伝子組換え)として初回投与時には4mg/kg(体重)を、2回目以降は2mg/kgを90分以上かけて1週間間隔で点滴静注する。
2.HER2 過剰発現が確認された乳癌における術後補助化学療法
通常、成人に対して1日1回、トラスツズマブ(遺伝子組換え)として初回投与時には8mg/kg(体重)を、2回目以降は6mg/kgを90分以上かけて3週間間隔で点滴静注する。

2011年3月(下線部追加部分)
効能・効果
HER2 過剰発現が確認された転移性乳癌
HER2 過剰発現が確認された乳癌における術後補助化学療法
HER2 過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌
用法・用量
HER2 過剰発現が確認された転移性乳癌には A 法を使用する。
HER2過剰発現が確認された乳癌における術後補助化学療法にはB法を使用する。HER2 過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌には他の抗悪性腫瘍剤との併用で B 法を使用する。
A 法:通常、成人に対して 1 日 1 回、トラスツズマブとして初回投与時には 4mg/kg(体重)を、2 回目以降は 2mg/kg を 90 分以上かけて 1 週間間隔で点滴静注する。
B 法:通常、成人に対して 1 日 1 回、トラスツズマブとして初回投与時には 8mg/kg(体重)を、2 回目以降は 6mg/kg を 90 分以上かけて 3 週間間隔で点滴静注する。
なお、初回投与の忍容性が良好であれば、2 回目以降の投与時間は30 分間まで短縮できる。

2011年11月(下線部追加部分)
効能・効果
○HER2 過剰発現が確認された乳癌
○HER2 過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌
用法・用量
HER2過剰発現が確認された転移性乳癌にはA法又はB法を使用する。HER2過剰発現が確認された乳癌における術後補助化学療法にはB法を使用する。HER2過剰発現が確認された乳癌における術前補助化学療法にはA法又はB法を使用する。
A法:通常、成人に対して1日1回、トラスツズマブとして初回投与時には4mg/kg(体重)を、2回目以降は2mg/kgを90分以上かけて1週間間隔で点滴静注する。HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌には他の抗悪性腫瘍剤との併用でB法を使用する。
B法:通常、成人に対して1日1回、トラスツズマブとして初回投与時には8mg/kg(体重)を、2回目以降は6mg/kgを90分以上かけて3週間間隔で点滴静注する。
なお、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。

2013年6月(下線部追加部分)
効能・効果
○HER2 過剰発現が確認された乳癌
○HER2 過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌
用法・用量(下線部追加、取り消し線部削除)
HER2過剰発現が確認された転移性乳癌にはA法又はB法を使用する。HER2過剰発現が確認された乳癌における術後補助化学療法にはB法を使用する。HER2過剰発現が確認された乳癌における術前補助化学療法にはA法又はB法を使用する。HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌には他の抗悪性腫瘍剤との併用でB法を使用する。
 A法:通常、成人に対して1日1回、トラスツズマブ(遺伝子組換え)として初回投与時には4mg/kg(体重)を、2回目以降は2mg/kgを90分以上かけて1週間間隔で点滴静注する。
 B法:通常、成人に対して1日1回、トラスツズマブ(遺伝子組換え)として初回投与時には8mg/kg(体重)を、2回目以降は6mg/kgを90分以上かけて3週間間隔で点滴静注する。
 なお、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。

 上記のように先発品であるハーセプチンの効能・効果と用法・用量は複数回にわたり変更されており、ハーセプチンには複数の効能・効果と用法・用量が存在します。


特許5818545


 特許5818545の内容を見てみると、“HER2の過剰発現によって特徴付けられる乳癌”、“8mg/kgの初期投与量”、“6mg/kg量の複数回のその後の投与量”、“各投与を互いに3週間の間隔をおいて静脈投与する”という構成要件を含んでいます。そのため、特許5818545は、ハーセプチンの効能・効果/用法・用量のうち、HER2 過剰発現が確認された乳癌のB法しかカバーしてないと考えられます。


特許5623681


 特許5623681の内容を見てみると、“乳腫瘍” という構成要件を含み、“(a)該医薬によって患者を治療する、(b)外科的に腫瘍を除去する、及び(c)該医薬又は化学療法剤によって患者を治療するという工程を順次行う”という構成要件も含んでいます。
 2011年11月の効能・効果/用法・用量の追加以前は、術前投与の効能・効果/用法・用量は承認されていませんので、特許5623681は、少なくとも、HER2 過剰発現が確認された転移性乳癌、HER2 過剰発現が確認された乳癌における術後補助化学療法、HER2 過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌の効能・効果/用法・用量をカバーしていないと考えられます。
 また、必ず“術前補助化学療法→外科的手術→術後補助化学療法”しなければならいというわけではありませんから、現在のハーセプチンの効能・効果/用法・用量の一部しかカバーしていないのではないか?という議論もあり得ると思われます。


特許係争の行方

 
 特許5818545と特許5623681は、ハーセプチンの効能・効果/用法・用量の全てをカバーしているわけではないと考えられます。
 通知「薬食審査発第0605014号」によると、
“先発医薬品の一部の効能・効果、用法・用量(以下、「効能・効果等」という。) に特許が存在し、その他の効能・効果等を標ぼうする医薬品の製造が可能である場合については、後発医薬品を承認できることとすること。この場合、特許が存在する効能・効果等については承認しない方針であるので、後発医薬品の申請者は事前に十分確認を行うこと。”
とされています。
必ずしも先発品と同じ効能・効果/用法・用量にする必要は無く、一部の効能・効果/用法・用量でもバイオシミラーは承認されると考えられます(“基本効能申請”や“虫食い申請”と呼ばれています。)。
 そのため、例えば、トラスツズマブのバイオシミラーの効能・効果/用法・用量が、
効能・効果
HER2 過剰発現が確認された転移性乳癌
HER2 過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌
用法・用量
HER2 過剰発現が確認された転移性乳癌には A 法を使用する。
HER2 過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌には他の抗悪性腫瘍剤との併用で B 法を使用する。
A 法:通常、成人に対して 1 日 1 回、トラスツズマブとして初回投与時には 4mg/kg(体重)を、2 回目以降は 2mg/kg を 90 分以上かけて 1 週間間隔で点滴静注する。
B 法:通常、成人に対して 1 日 1 回、トラスツズマブとして初回投与時には 8mg/kg(体重)を、2 回目以降は 6mg/kg を 90 分以上かけて 3 週間間隔で点滴静注する。
なお、初回投与の忍容性が良好であれば、2 回目以降の投与時間は30 分間まで短縮できる。“
とされた場合、この一部の効能・効果/用法・用量は、特許5818545と特許5623681にカバーされていませんので、日本化薬のトラスツズマブのバイオシミラーは、早ければ、2017年4月の製造販売承認申請から約1年経過後の2018年4月承認~5月薬価収載ということもあり得ると考えられます。
 もちろん、上記のような効能・効果/用法・用量の使用数が少なく、市場性の観点から先発品であるハーセプチンと同じ能・効果/用法・用量を選択するということも考えられます。しかし、ハーセプチンと同じ能・効果/用法・用量を選択した場合、無効審判において、特許庁が「特許5818545と特許5623681は無効でない」と判断しているますから、この特許庁の判断が覆るまでは、バイオシミラーの承認はされないのではないでしょうか。

 無効審判、侵害訴訟、薬事審査の行方等、今後の動向が注目されます。