2019年8月29日木曜日

ベバシズマブ(アバスチン®)バイオシミシラー

 8月23日の薬食審医薬品第二部会でベバシズマブBS(ベバシズマブ後続2)の承認が了承されました。既にファイザーのバシズマブBS(ベバシズマブ後続1)が承認されていますが、アバスチン®とベバシズマブBSとでは効能・効果が同じではありません。今回は、この効能・効果の違いについて、取り上げてみたいと思います。



アバスチン®の製品情報

有効成分
一般名:ベバシズマブ(遺伝子組換え)
剤形・規格
アバスチン®点滴静注用100mg/4mL(2007年6月薬価収載)
アバスチン®点滴静注用400mg/16mL(2007年6月薬価収載)
製造販売元
製造販売/中外製薬株式会社


アバスチン®とベバシズマブBSの効能・効果

アバスチン®
ベバシズマブBS
効能・効果用法・用量
治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはベバシズマブ(遺伝子組換え)として 1回 5 mg/kg(体重)又は10mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔は 2 週間以上とする。
他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはベバシズマブ(遺伝子組換え)として 1回7.5mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔は 3 週間以上とする。×
扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはベバシズマブ(遺伝子組換え)として 1回7.5mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔は 3 週間以上とする。
×
卵巣癌×
進行又は再発の子宮頸癌×
手術不能又は再発乳癌パクリタキセルとの併用において、通常、成人にはベバシズマブ(遺伝子組換え)として 1 回10mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔は 2 週間以上とする。×
悪性神経膠腫通常、成人にはベバシズマブ(遺伝子組換え)として 1 回10mg/kg(体重)を 2 週間間隔又は1 回15mg/kg(体重)を 3 週間間隔で点滴静脈内注射する。なお、患者の状態により投与間隔は適宜延長すること。×
 
 アバスチン®とベバシズマブBSの効能・効果を比較すると、アバスチン®の効能・効果のうち、ベバシズマブBSで承認されているのは、「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」のみで、二つある用法・用量の片方のみです。


アバスチン®(ベバシズマブ)の基本特許


 アバスチン®(ベバシズマブ)には二つの基本特許が登録されています。
一つ目の特許3398382の請求項1は、「抗VEGF抗体であるhVEGFアンタゴニストを治療有効量含有する、癌を治療するための組成物」、VEGF抗体により癌を治療するという用途を保護する特許です。
 二つ目の特許3957765の請求項1は、「以下の超可変領域アミノ酸配列:CDRH1(GYX1FTX2YGMN、ここに、X1はTまたはDであり、X2は、NまたはHである:配列番号130)、CDRH2(WINTYTGEPTYAADFKR,配列番号2)およびCDRH3(YPX1YYGX2SHWYFDV、ここに、X1はYまたはHであり、X2はSまたはTである:配列番号131)を含む重鎖可変ドメイン、並びに以下の超可変領域アミノ酸配列:CDRL1(SASQDISNYLN、配列番号4)、CDRL2(FTSSLHS、配列番号5)およびCDRL3(QQYSTVPWT、配列番号6)を含む軽鎖可変ドメインを有している、約1x10-8Mを超えないKd値でヒト血管内皮細胞増殖因子(VEGF)と結合するヒト化抗VEGF抗体」で、ベバシズマブの抗体そのものを保護しています。
 これら二つの基本特許は、アバスチン®の効能・効果/用法・用量によって、延長登録期間が異なるため、効能・効果/用法・用量よって特許期間が異なります


アバスチン®特許3398382特許3957765
効能・効果用法・用量再審査期間用途物質(抗体)
治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはベバシズマブ(遺伝子組換え)として 1回 5 mg/kg(体重)又は10mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔は 2 週間以上とする。4/17/201512/31/20164/3/2018
他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはベバシズマブ(遺伝子組換え)として 1回7.5mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔は 3 週間以上とする。4/17/201510/28/20178/2/2020
扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはベバシズマブ(遺伝子組換え)として 1回7.5mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔は 3 週間以上とする。
4/17/201510/28/20179/21/2020
卵巣癌4/17/201510/28/20124/3/2023
進行又は再発の子宮頸癌5/22/202610/28/20124/3/2018
手術不能又は再発乳癌パクリタキセルとの併用において、通常、成人にはベバシズマブ(遺伝子組換え)として 1 回10mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔は 2 週間以上とする。4/17/201510/28/20178/10/2022
悪性神経膠腫通常、成人にはベバシズマブ(遺伝子組換え)として 1 回10mg/kg(体重)を 2 週間間隔又は1 回15mg/kg(体重)を 3 週間間隔で点滴静脈内注射する。なお、患者の状態により投与間隔は適宜延長すること。6/13/202310/28/20124/3/2023


 一つ目の特許3398382はすでに全ての効能・効果/用法・用量で特許期間が満了していますが、二つ目の特許3957765は、「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」の二つある用法・用量の片方のみしか特許期間が満了していません
 このため、ベバシズマブBSで承認されている効能・効果/用法・用量は、アバスチン®の効能・効果/用法・用量と比べて限定されているわけです。
おそらく、ベバシズマブBS は、2020年の8月に「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」のもう一方の用法・用量が、9月に「扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」が、2022年8月に「手術不能又は再発乳癌」が、2023年4月に「卵巣癌」が追加されると思われます。「悪性神経膠腫」は、再審査期間が2023年6月に終了するため、その後に効能追加の申請が、「進行又は再発の子宮頸癌」は、再審査期間が2026年5月に終了するため、その後に効能追加の申請がされると思われます。




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